雨もあがり快晴! シェアサイクルで、♬行こう!行こう!鬼の館♬
8月31日(土)。北上市は快晴、気温も30℃。前日まで雨が降ったりやんだりの鬱陶しい天気だっただけに、この日はうれしい行楽日和となりました。
私が向かったのは、北上市の中心部にある「さくら野百貨店」。こちらで、電動アシスト付きのシェアサイクル「チャリオ」をレンタル。前日まで空を覆っていた雨雲を一掃する気持ちいい青空は、サイクリング日和でもあります。目指すは、9kmほど先にある「鬼の館」へ、レッツゴー!
そもそも、なぜ私がシェアサイクルを選択したかと言えば、前日、東京の友人から「東京はまだまだ熱い(“暑い”を通りこしているらしい)」と嘆きのメールが届いていたため。
北上市も夏は暑かったですが、お盆が過ぎて、だいぶ過ごしやすくなってきました。そこで、快適な北上ライフを友人にPRしようと思ったのでした(*´艸`*) とまれ。
いざ、シェアサイクルに乗ろうとすると、同乗者の姿が……。「おいおい誰だよ」と見てみれば……。
北上市はすっかり秋の気配です。
さて、シェアサイクルに乗り込み、北上市の中心部から5分も走ると、そこにはたわわに実をつけた稲穂が風に揺れる、のどかな秋の風景がひろがっています。
近くの公園には、家族連れの姿が……。微笑ましい休日の風景ですね。
こちらのパン屋さんは、焼き立てのパンが好評です。詳細は、こちら!
「♬行こう!行こう!鬼の館〜♬ 8月31日に」と最近ずっと頭を離れないラジオCMソングを鼻歌まじりに、電動アシスト付きの自転車を走らせていると、「鬼剣舞」もお出迎え。この日「鬼の館」で開催されるイベントへの期待感も高まります。
夏から秋へ。変わりゆく北上の風景を楽しみながら、のんびりシェアサイクルを走らせること40分、目的地の「鬼の館」に到着。
現代によみがえった「赤鬼」と「青鬼」。その正体とは!?
その鬼たちと出会ったのは、お目当てのイベント開催を前に行われた、学芸員さんが案内する「鬼の館ツアー」です。
「あの高嶺 鬼すむ誇り……」と北上市の市民憲章にもありますが、北上市は民俗芸能の宝庫。
神楽、鹿(しし)踊りなど、さまざまな民俗芸能を継承する60の団体があり、なかでも鬼が勇壮に舞う「鬼剣舞」はそれぞれの地域で歴史を受け継ぐ19の団体があり、自分たちの舞いに誇りを持ち、日々鍛錬を重ねています。
そんな「鬼」とゆかりの深い北上市を体現するテーマ博物館「鬼の館」に、世界の鬼たちとともに展示されていたのが、「役行者(えんのぎょうじゃ)像」(北上市 伍大院蔵)。
「役行者」といえば、修験道の伝説的な開祖。
「鬼の館」の説明文曰く「葛城(かつらぎ)山中にて荒行を積み、吉野の金峰山(きんぷせん)で霊感を得、呪術を身につけた修験者(山伏)である。前鬼・後鬼の二鬼神を自在に働かせることができた」とのこと。
前鬼は「赤鬼」。鉄の斧を手にして役行者の前を歩き、道を切り拓いたとか。一方、後鬼は「青鬼」。霊力のある水が入った水瓶を持ち、役行者の後を歩きながら、赤鬼が切り拓いた道に種を植え、水を与えていったとのこと。役行者は、そんな頼もしい二鬼神とともに、修験道を世にひろめていったのでした。
世界にはいろんな鬼がいるものだなあ~、と感心しながら「鬼の館ツアー」を終えてフロアに出てみると、そこにはイベントに参加するたくさんの老若男女の姿が……。
しかも、イベントがスタートし、80人を超える参加者の前に颯爽と現れたのは、なんと赤鬼と青鬼……。
先ほど「鬼の館ツアー」で見た役行者の両脇に勇ましい姿で佇む赤鬼・青鬼と比べると、こちらは一転、ご陽気者といった感じ。果たして、この2人は一体なに者でしょう!?
いよいよ「Fusion 360 Meetup in 鬼の館」が開幕!
この日、「鬼の館」で13:30からスタートしたのは、「Fusion 360 Meetup in 鬼の館」というイベント。「きたかみ仕事人図鑑」でも、ラジオ番組やラジオCMなどでご紹介してきた注目のイベントです。
ここで改めて、Fusion 360(フュージョン スリーシックスティ)についてご紹介しましょう。こちらは、個人なら無料で利用できる3D CADソフトのこと。企業で利用する場合も、利用料は年間6万円ほどと安価に利用できる点が魅力です。
今回のイベントは、このFusion 360の開発元であるオートデスク社が全国各地で開催しているもの。Fusion 360を活用している企業の最新事例や学生の3D技術の取り組みなどを紹介しながら、ゲストと参加者がツナガル場所をつくろうという試みで、今回が17回目。北上市では東北で初めて開催された昨年に続いて2回目の開催となります。
話は戻って、イベント会場に颯爽と現れたご陽気な赤鬼と青鬼について。
実はこの2人、「Fusion 360 Meetup in 鬼の館」の司会進行を務めると同時に、今回のイベントのキーパーソンでもあります。
赤鬼は、Fusion 360の発売元・オートデスク社の藤村祐爾さん。一方、青鬼は「きたかみ仕事人図鑑」でもおなじみ、「いわてデジタルエンジニア育成センター」のセンター長として仲間と一緒に地元・北上をはじめ岩手県に3D技術をひろめようと活動している小原照記さんです。
しかも、この2人は昨年8月に発売し、累計販売数1万部を突破したFusion 360のガイドブック「Fusion 360マスターズガイド ベーシック編」を共同執筆したコンビでもありました。
そうなのです。まさに2人は役行者の赤鬼と青鬼と同様、Fusion 360という3D CADソフトを通して3D技術の魅力を世にひろめようと奮闘する3D界の赤鬼と青鬼。
その佇まいこそご陽気者ですが、胸に秘めた熱い想いは、80人を超える参加者、さらにはステージに立ってプレゼンをするゲスト、展示会場で自身の取り組みを紹介する方々にも、しっかりと伝わっていました。
予定時間を大幅に上回った赤鬼さんのプレゼンは、Fusion 360を活用して、ものづくりの未来を大きく飛躍させる「ジェネレーティブデザイン」(詳細はこちら!)の現在、そして未来を熱く語り、参加者をワクワクさせます。
さらに、木工やチョコレートの型づくりへの展開など、私たちの身近なところにも普及が進んでいる最新事例を紹介してくれた「株式会社VOST」(東京)のシニアエンジニア・大塚 貴さん。
3D CADソフトが特別なものではなく、スマホのアプリのように身近なものとして使いこなし、既成概念にとらわれない自由な発想で、自分たちの可能性をひろげる大学生たちの最新の取り組みを紹介してくれた九州大学大学院 芸術工学府の河田尚子さんなど、興味深いプレゼンが続きました。
また、北上コンピュータ・アカデミーの学生・高橋廉(れん)さんも登場。廉さんは、「押し出し」「スケッチ」「コピペ」といった基礎的なツールのみを使ってどこまで創造性豊かな作品がつくれるか、というオートデスク社が学生向けに開催した「押し出しコンペ2」で全国5位に入賞。
さらに、高校時代には、3D技術を活用して数百年前の伝統工芸品「南部鉄器」を復元。今回のプレゼンでは、その2つの取り組みについて紹介してくれました。北上市でも、若い世代がすくすくと育っています。頼もしい!
子どももママさんも。家族みんなが“楽しい”と出会えるMeetupへ!
この日のイベントのもうひとつのテーマが、家族みんなが楽しめること。メイン会場では、Fusion 360を活用した企業や学生による最先端の事例が紹介される一方……。
チビッ子は、和紙でできたお面に色を塗るお面づくりに挑戦。
メイン会場から一歩外に出ると、「きたかみ仕事人図鑑」でもおなじみ、「夏油古民家カフェ 小昼~kobiru~」が出張オープンしており、手づくりのかき氷やドリンクを販売。なかでもかき氷は、東京よりは涼しいとはいえ、気温30℃のこの日は、チビッ子はもちろん大人にも大好評でした。
さらに展示コーナーには、岩手県や宮城県でFusion 360を中心に3D技術を活用した取り組みを実践している事業者さんなどが、最新のプロダクトを展示。
1848年創業、南部鉄器の老舗「株式会社 及富」さん(奥州市)では、伝統の匠の技と最先端の3D技術を融合させることで、ゴジラの南部鉄瓶、ザクの南部鉄器など、話題作を次々に世に送り出しています。今回はゴジラの南部鉄瓶など最新作を展示。注目を集めていました。
「訪問看護ステーション すぽっと」(宮城県名取市)の作業療法士である伊藤彰さんは、昨年に続き3Dプリンタで製作した自助具を展示。
自助具とは、体が不自由な方が自立した生活を送れるように、箸やスプーンを持ちやすくするなど、日々の暮らしをサポートする工夫や改良が加えられた道具のこと。
いずれも大量生産はできないもので、3Dプリンタならひとりひとりの状態に合わせて自助具をつくることができます。こちらも3D技術のメリットを体感できる展示でした。
さらに、「鬼の館」の芝生の一角を使ってロボット草刈り機の実演を行ったのは、除雪機で全国7割のシェアを誇る「和同産業株式会社」さん(岩手県花巻市)。
同社が手掛けるロボット草刈り機は他社製品に比べ、轍やデコボコの道でも安定走行できる点が強みで、年内の発売に向けて取り組んでいるとのこと。
こちらのカバーの3D CADデータを担当したのが、小原照記さんがセンター長を務める「いわてデジタルエンジニア育成センター」とのこと。ちなみに気になる担当者は……。
「僕です!」と小野寺亮太さん。(小野寺さんの詳細はこちら!)
岩手県で産業用ドローンサービスを展開している「株式会社トップクルー」さん(岩手県宮古市)では、昨年に引き続きドローンを展示。
併せて紹介していた、プログラミングを学びたいヒト向けに開発された教育用ロボット「RoboMaster S1」は、タテにヨコにと縦横無尽に動き回る不思議な動きにチビッ子も興味津々でした!
その他、株式会社アイオー精密さん(岩手県花巻市)、岩手県立大学さん(岩手県滝沢市)、計測・解析ラボさん(岩手県盛岡市)、 株式会社サンアイ精機さん(岩手県奥州市)、 みやぎデジタルエンジニアリングセンターさん(宮城県仙台市)、ファブテラスいわてさん(岩手県盛岡市)などが出展されていました。もちろん、いわてデジタルエンジニア育成センター(岩手県北上市)のフルカラー3Dプリンタを使った造形物も!
鬼剣舞も披露! 最後まで“楽しい”企画でおもてなし!
さらに、イベントの合間には黒岩鬼剣舞のみなさんによる鬼剣舞の演舞があり、「鬼の館」のお隣にある「石臼挽き手打ち蕎麦 神楽屋」さんでは、女性限定の蕎麦打ち体験もあるなど、楽しい企画満載のイベントとなりました。
なかでも、最後に行われた「もちまき」は、子どもから大人までみなさんが参加し、大盛況! たくさんの笑顔とともに、「Fusion 360 Meetup in 鬼の館」は幕をおろしました。
当初、定員は70名とのことでしたが、終わってみれば87名の方が参加。しかも、その6割が北上市外から訪れた方だったそう。最先端の3D技術はもちろん、北上市の魅力もたっぷり堪能できる1日となったのではないでしょうか。
遥か昔、鉄の斧を手にして役行者の前を歩き、道を切り拓いた前鬼(赤鬼)。さらに、霊力のある水が入った水瓶を持ち、役行者の後を歩きながら、前鬼(赤鬼)が切り拓いた道に種を植え、水を与えていった後鬼(青鬼)の働きにより、修験道は世にひろまっていったとか……。
赤鬼はもちろん、北上市の青鬼は、これからも3Dの種を植え続けます!
さしずめ次の種は、累計販売数1万部を突破した「Fusion 360マスターズガイド」の続編の発売でしょうか。執筆も順調とのこと(ですよね? 青鬼さん?)。
そちらも、乞うご期待!
「Fusion 360 Meetup Vol.17 in 鬼の館」開催概要
開催日時:2019年8月31日(土)13:00~16:30
会場:北上市立 鬼の館
参加費:無料(一部、体験のみ有料)
開催スケジュール:
(1) メインイベント
13:00~13:30 鬼の館ツアー(学芸員の解説付き)
13:30~ Meetupスタート
①「Fusion 360 ジェネレーティブデザイン事例」
オートデスク株式会社 藤村祐爾さん
②「Fusion 360 日本国内ユーザー事例」
株式会社VOST 大塚 貴さん
③「Fusion 360 全国学生ユーザー事例」
九州大学大学院 芸術工学府 河田尚子さん
~休憩~ 黒岩鬼剣舞演舞、展示コーナー見学など
④「Fusion 360 東北ユーザー事例」
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原照記さん
⑤「ロボット草刈り機(自立走行無人草刈機)MR-300の開発事例」
和同産業株式会社(岩手県花巻市)
⑥「押し出しコンペ2入賞学生事例」
北上コンピュータ・アカデミー 高橋廉さん
⑦「ものづくりの未来」 講演者パネルディスカッション
16:30 最後はみんなで! 展勝地もちによる「もちまき」
(2)無料イベント
①最新技術展示コーナー……ドローン飛行、自動草刈りロボット、デジタルと匠の技の融合によって生まれた南部鉄器、フルカラー3Dプリンタ造形物(いわてデジタルエンジニア育成センター)など
②鬼の館イベント……学芸員の解説付き鬼の館ツアー、黒岩鬼剣舞公演
(3)有料イベント&ショップ…
①鬼のお面づくり(500円)
②女性限定!蕎麦打ち体験会 (参加費2,000円 ※Fusion 360 Meetup同伴者は200円引き)
③夏油古民家カフェ 小昼~kobiru~ オリジナルかき氷とドリンク
主催:オートデスク株式会社
共催:北上市、北上ネットワーク・フォーラム(KNF)、北上オフィスプラザ、
北上市産業支援センター、いわてデジタルエンジニア育成センター
(了)
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