40人の「14歳」と12人の「仕事人」が育む時間。11/11、地元中学のキャリア学習をリポート!

北上北中学校 2学年のキャリア学習「仕事人と語ろう」開催!

 11月11日(水)、午前10時30分。

 その学び舎は、のどかな田園風景を見下ろす小高い丘の上に静かに佇んでいました。

 「二子さといも」で有名なこの地は北上市の北部に位置。北上駅からはクルマで15分ほどの距離にあり、クルマで訪れると秋の収穫を終え、のんびりとした時間が流れる田んぼと、美しく色づいた木々が出迎えてくれました。

 自然豊かなこの地で、およそ120名の生徒さんたちが日々勉強や部活動などに励んでいるそうですが、今回の目的はその2学年の生徒さんたち40名。

 この日は3時間目と4時間目を利用して、2学年のキャリア学習「仕事人(しごとびと)と語ろう」を開催。地元・北上市を中心に活躍する12人の「仕事人」と40人の「14歳」が10のグループに分かれて、じっくり「仕事」について語り合うという取り組みです。

 この開催にあたっては、かくいう「きたかみ仕事人図鑑」も微力ながらお手伝いさせていただきました。時を戻すこと4カ月前。

 同中学校2学年の学年主任を務める菊池俊浩先生から、「地元で情熱を持って仕事に取り組んでいる『仕事人』と生徒たちがじっくり語り合える機会をつくりたいのですが、どなたかご紹介いただけないですか」というご相談が!

 今年はコロナの影響で、例年行っていた2日間の「職業体験」も「事業者さんにご迷惑をかけては申し訳ない」と自粛されたそう。それに代わるキャリア学習として先生方が模索されているなか、「きたかみ仕事人図鑑」にご相談いただいたという次第です。

 夢とこだわりと熱い“想い”を持って仕事に励む北上市の事業者さんをたくさんご紹介してきた「きたかみ仕事人図鑑」にとって、地元の中学生と地元の魅力的な事業者さんが出会い、その取り組みや“想い”を知ってもらえることはうれしい限り!

 ということで、「地元で情熱を持って仕事に取り組んでいる『仕事人』ならいくらでもご紹介しますが、せっかくなら子どもたちがどんな職業に興味を持っているのか、まずはアンケートを取っていただいて、その職業の方に来ていただけるようにお願いしていきましょう」と提案すると、菊池先生もさっそく動いていただき、あとはトントン拍子。

 事前のアンケートから生徒さんたちが興味を持っている分野の「仕事人」たちにお声がけしたところ、みなさんもこの取り組みを面白がっていただき、快くご参加いただくことに! ご協力いただいたみなさま、ありがとうございます<(_ _)>

 というわけで、今回の「キャリア学習」のポイントは以下の2つ。

●事前にアンケートを取り、生徒さんたちが興味を持っている職業の「仕事人」たちが登場。

●生徒さんたちに主体的に取り組んでもらうため、事前学習のもと、質問の準備はもちろん仕事人たちとの交流会の司会進行も生徒さんたちが担当。

  以上を踏まえて、今回は小グループに分かれて子どもたち一人ひとりが“興味”を持っている職業の「仕事人」と、そして事業者さんは自分が生業としている仕事に興味を持ってくれている生徒さんたちと、より深いコミュニケーションができるように配慮されている点が魅力。

 さらに、3・4時間目の枠を使って2回に分けて交流できる時間を設けているため、生徒さんには自分が興味を持っている仕事以外の事業者さんと触れ合う場が、そして事業者さんにはより多くの生徒さんたちと深く交流するチャンスが……。

 というわけで、今回の開催となりました。

会場へは生徒さんたちがエスコート!  いよいよ交流会スタート!

 さて、講師控室には「仕事人」たちが続々。もうすぐスタートですが、今回は生徒さんたち主導ということで、「仕事人」たちは始まりを待つだけ。雰囲気も落ち着いています。

 一方、壁を隔てた廊下には緊張感が……。こちらでは、生徒さんたちが2学年主任の菊池先生を囲んで最後の打ち合わせ。

 今回は生徒40人に対して12人の「仕事人」が参加し、職種に合わせて10のグループに分かれて、体育館含め9つの教室で交流会が開催されます。それに対して、先生の数は菊池先生含め5名。

 となると、グループごと・教室ごとに先生がつくことはできないため、それぞれの教室まで「仕事人」たちをエスコートするのも、交流会で司会進行を務めるのも生徒さんたちが担当。

 というわけで、3・4時間目のキャリア学習がスタートすると、あとは「仕事人」たちとのやりとりはすべて生徒さんたちの手にゆだねられます。そこで菊池先生から「粗相のないように」と最後の確認が行われていました。

◇生徒さんたちが持っていた資料◇

資料には、この日のスケジュールと各担当者(案内役・進行役・書記など)や質問内容などが記載されており、事前準備もバッチリの様子! 「14歳」と「仕事人」の「ディスカッション」も楽しみ!

 午前10時40分。いよいよ交流会がスタート!

 控室に生徒さんたちが次々に訪れ、「仕事人」たちをそれぞれの教室にエスコートします。が、やっぱり緊張と恥ずかしさが大きいのでしょう。マスク越しのせいもあってか声が小さかったり、早口でよく言葉が聞き取れなかったり、言おうとしたことを忘れたり(笑)……。しかし、それもご愛敬。これからどんな交流会がはじまるのか、楽しみになりました!

 それでは、各グループの様子を写真とともにお楽しみください<(_ _)>

●建設・土木代表

仕事人:髙橋茂𠮷さん

株式会社アサヒテクノ 代表取締役

会場:図書室

髙橋さんは特許を取得した独自の真空技術で地盤改良工事を革新している方。ということで、難しい技術のところをわかりやすく説明しようと、さまざまな資料を持参。集まるのは男子だけかと思いきや、4時間目には女子生徒さんも参加。少しでもわかりやすく楽しく仕事の魅力を伝えようと、髙橋さんのトークにも熱が入ります。

●飲食・サービス代表

仕事人:明戸一眞(あけと かずま)さん

CAFE LAube(カフェ ローブ)オーナー

会場:2B教室

自家焙煎のおいしいコーヒーと出会ってから、自分がお店を開くまでの経緯を丁寧に語っていた明戸さん。ロードサイドに手づくりでテイクアウト専門のお店をオープンして以来、現在は盛岡に3号店も。自分の“好き”の可能性をひろげている明戸さんの言葉に、真剣に耳を傾ける生徒さんたちの姿が印象的でした。

●スウィーツ代表

仕事人:清水 活(いきる)さん

洋菓子工房 ケーキ屋Shimizu オーナーパティシエ

会場:2A教室

それまで静かに話を聞いていた生徒さんたちも、清水さんの許可が出るとお菓子の前へ一目散!  「食べた~い! 先生、だめですか~!」という声に清水さんも笑顔を浮かべます。アレルギーを持つ自分だからこそつくれるおいしいお菓子をつくろうと奮闘する清水さんの想いを、生徒さんたちもお腹が空くほど実感しているようでした(笑)

▲2階の教室から眺める風景。色づいた木々の向こうには、東北新幹線が!

●農業代表

仕事人:馬場一輝さん

農業生産法人クレアクロップス株式会社 代表取締役

会場:家庭科室

「農業を若いヒトも憧れる面白い仕事にしてやろう!」といろいろ仕掛けている馬場さん。この日は自身で立ち上げたYouTubeチャンネルも話題に。今すぐの成果ではなく、未来に何が起こるかワクワクしながら取り組んでいるという話は興味深く、「14歳」にどのように届いたのか、個人的にも気になりました。

▲家庭科室に置かれていた生徒さん手づくりの作品。

●ファッション代表

仕事人:宇土寿和(うと としかず)さん

株式会社UTO(ユーティーオー) 代表取締役

会場:木工室

北上市にある直営工場で世界最高峰のカシミヤ糸を使用した最高級カシミヤニットを製造し、販売している宇土さん。この日はその感触も楽しんでもらおうと、自慢のカシミヤニットのストールを披露。実際に身につけて肌触りまで実感した生徒さんたちからは歓声が!  最初にがっちり14歳のハートをつかんだ宇土さんでした。

●ものづくり代表

仕事人:碓井浩太郎さん

有限会社 ウスイ製作所 代表取締役

会場:3A教室

製造業が盛んな北上市のものづくり代表として参加された碓井さんは、国内外の一流自動車メーカーの部品を中心に医療や半導体の装置部品など幅広く手掛けています。交流会では動画や「コマ」なども使って、そんな自社の取り組みをわかりやすく紹介。さらに、誰もつくれなくて困っているオーダー加工部品について知人を通じて同社に相談が来るケースが多々あるそう。それに対して「自分たちのアイデアや試行錯誤を重ねて完成できたときは最高の喜び」だと語る碓井さん。「ものづくりとは?」というディスカッションのテーマの答えも、そのなかに……。

●僧侶代表

仕事人:海野義範(うんの ぎはん)さん

曹洞宗 花岩山 永昌寺 第25世 住職

会場:3B教室

海野さんは曹洞宗の「布教師養成所」で8年間学んだ方。それだけに「僧侶」という仕事に興味を持ってくれる生徒さんと交流できることをワクワクしている様子。「お布施も給料に?」という14歳の率直な質問にも大笑いしながら、「僧侶も給料制なのでお布施の多い少ないは関係ないんですよ」と明朗回答。生徒さんの夢を壊しちゃったかな(笑)

●スポーツ代表

仕事人:清水康也さん

花巻東高等学校 サッカー部監督

会場:パソコン室

ベガルタ仙台、サガン鳥栖などJリーグでも活躍した清水さんは、自身の経験を交えながら日々の積み重ねがいかに大切かを熱く語っていました。現在はお隣の花巻市にある高校のサッカー部の監督をされているということで、子ども目線に立ったアドバイスは生徒さんたちにも共感と説得力を持って伝わっている様子でした。

●医療・福祉代表

仕事人:千葉恭一さん

ホームケアクリニック えん 院長)

仕事人:髙橋美保さん

ホームケアクリニック えん 看護師長)

会場:体育館 右側

2013年に岩手県で唯一の訪問診療専門のクリニックとして誕生。現在も常時130~140名の患者さんの暮らしに寄り添い、笑顔のある在宅生活を支えている同クリニックで、現場の最前線に立つお二人の前には、医師を志す生徒さんたちがズラリ。医師・看護師不足が深刻な地方都市の未来を担ってくれる生徒さんがこの中にも……。

●介護・保育代表

仕事人:黒澤 豊さん

グループホーム「おおきな木」施設長)

仕事人:黒澤志摩子さん

ほいくえん「ちいさな木」園長)

会場:体育館 左側

多世代が暮らし、ご近所さんも気軽に訪れる昔の家のようなホームをつくろうと、2019年4月に誕生した「おおきな木 ちいさな木」。ディスカッションでは、「社会人になるために、中学時代に覚えておくべきこと」がテーマでしたが、それに対して豊さんは「挨拶の大切さ」を語っており、それについては職員にも常に言っているとのこと。今回の交流会でも生徒さんたちの元気な挨拶が印象深かったそうで、改めて自分たちが大切にしている「挨拶」の重要性を見つめ直す機会にもなった様子……。

 以上。11月11日(水)午前10時40分から北上北中学校で2時間にわたって行われた2学年のキャリア学習「仕事人と語ろう」の取り組みの様子でした。

 すべてのグループ・教室を回って見学していたため、それぞれのグループの交流をじっくり聞く時間がなかったのは残念ですが、40人の「14歳」と12人の「仕事人」の対話の端々から聞こえてくる言葉の数々は興味深く、また、たくさんの真剣な表情や笑顔を見られたことは貴重な経験となりました。ありがとうございました<(_ _)>

 また、この取り組みに参加されたみなさま、お疲れさまでした<(_ _)>

 11月下旬には、北上北中学校にて今回の取り組みを振り返る発表会があるそうで、筆者はそちらにも参加させていただく予定です。今回のキャリア教育「仕事人と語ろう」を通して、40人の「14歳」が何を感じたのか、次の機会に改めてご報告できればと思っております。

 そちらも、どうぞ、お楽しみに!

(了)

2020-11-20|
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