地域のヒトを取材し舞台化。北上市民の知られざる一面に迫る!
演劇舞台の制作を通して、北上市の歴史や芸術文化を創造する「北上市民劇場」の第44回公演が3月12日(土)・13日(日)の2日間にわたって開催されました。
「アイムヒア~ここが私の生きる街~」と題した今回の公演は、昨年に引き続き北上市で暮らす人々を主役に、取材を通してそのヒトが大切にしてきたことや意外な体験談などを脚本化し演劇で再現しながら、北上市での人々の暮らしぶりを見つめ直すというユニークな取り組みです。
しかも、今年の主役は「きたかみ仕事人図鑑」でもご紹介した「ジョブカフェさくら」さんと「多機能型事業所 ito」さんとのことで、公演初日にさっそく訪れてみました。
会場は、「北上市文化交流センター さくらホール」。演劇が行われる中ホールの前には、「ジョブカフェさくら」さんと「多機能型事業所 ito」さんのブースが設置され、それぞれの取り組みが紹介されていました。
ジョブカフェさくらさんの展示ブース
北上地域の就活をお手伝いする機関としてさまざまな活動を展開している「ジョブカフェさくら」さん。日ごろから一般の方の就活相談はもちろん、子育て中のママさん、社会に一歩踏み出せずに悩む若者たち、ご高齢の方など、さまざまな立場の方の相談に対応するだけでなく、多様なセミナーやイベントの開催、集いの場づくりなどを通して息の長い就活サポートを行っています。今回、舞台化された「転妻物語」(転妻=転勤者の妻たち)もそうした取り組みのひとつで、会場ブースにはそれを含め幅広い取り組みを展示。
◇仕事人図鑑でご紹介した「ジョブカフェさくら」さんの記事はこちら! ▶▶▶ ジョブカフェさくら
多機能型事業所 itoさんの展示ブース
障がいのある方の就労支援を行う障がい福祉サービス事業所を運営するitoさんは、さまざまなつながりの結び目となる場をめざし、お買い物しなくてもどなたでも利用できるフリースペースを活用。福祉サービスの利用者さんは接客も担当し、駄菓子や裂き織などの雑貨を販売しながら、地域の方の触れ合いも大切にして就労に向けて仕事の勉強をしています。会場のブースでは、そんなitoさんが扱う駄菓子や色とりどりの雑貨がずらり。公演当日も利用者さんがブースに立ち、接客する姿も。
◇仕事人図鑑でご紹介した「多機能型事業所 ito」さんの記事はこちら! ▶▶▶ 多機能型事業所 ito
地域のヒトを主役に、ご本人も登場する3つのエピソードが開幕!
さて、気になる演劇ですが、今回は「ジョブカフェさくら」さんと「多機能型事業所 ito」さんの取り組みから生まれた3つのエピソードが舞台化されました。
公演中の写真撮影はNGのため、以下、内容を簡単に文章のみでご紹介しましょう。
戯曲① 転妻物語
北東北随一の産業集積都市として発展する北上市は、さまざまな企業の転勤者が多く集まる街でもあります。「転妻物語」は北上市に転勤してきたご主人についてきた、そんな“妻”(略して「転妻」)たちが主役。
職場のある“夫”や学校のある“子ども”たちには、家庭とは別のコミュニティがあります。しかし、夫の仕事の都合で見知らぬ街に引っ越してきた“妻”たちには、友達どころか知り合いもなく、土地勘もなく……。そうした転妻さんの悲喜こもごもを描いた本作は、夫や子どもたちが外のコミュニティで充実した日々を送っているのを尻目に、慣れない田舎暮らしでひとり孤独に苛まれる転妻の苦悩の日々からスタート。
しかし、「ジョブカフェさくら」さんが開催する転妻さん向けの交流イベントや農業体験などでの出会いを通して……。お芝居では転妻さんが“農業”と出会って変化していく様子が描かれますが、舞台には転妻さんご本人も登場しており、その自然な演技にびっくり! この方にとっての“農業”は“お芝居”なのかも、と思ったほどでした。
◇転妻さんが「きたかみE&Beエフエム」にも登場! ▶▶▶ 転勤者の妻たちへEpisode 1 転勤者の妻たちへEpisode 2
戯曲② 端(はな)の応援団
本作は昨年11月に北上市に誕生した「多機能型事業所 ito」さんがテーマですが、その舞台が出来上がるまでも含めてお芝居にした、3つのなかでは異色の作品です。
今回の「北上市民劇場」の取り組みは参加者さんが実際に「多機能型事業所 ito」さんを取材し、それをもとに脚本をつくり、舞台化するのがコンセプト。この戯曲の脚本もそうした過程を経て誕生したものですが、「応援団」というタイトルが「多機能型事業所 ito」さんの考え方にふさわしい言葉か? という疑問から……。
脚本づくりを通して、今回の「北上市民劇場」の取り組みの “本当の意味”を改めて見つめ直し、その過程まで舞台化した、フィクションとノンフィクションが交じり合う意欲作。取材相手の想いにも真摯に向き合う舞台づくりの裏側を描きながら、利用者さんのそばに寄り添う「多機能型事業所 ito」さんの想いも表現しようとチャレンジする見応えのある作品でした。
戯曲③ さきおりのさと
こちらも「多機能型事業所 ito」さんの取り組みから生まれたお芝居。
障がいのある方の自立と就労を支援する多機能型事業所に、祖父に連れられて10代の女の子・アサミがやってきます。その多機能型事業所には同じく10代の女の子・サクラがスタッフとして働いていますが、2人は幼馴染だと判明し、やがてアサミもそこに通うように。しかし、なかなか周りとうちとけることができず……。
そんなとき他のスタッフが出払い、アサミとサクラが2人っきりで過ごすことに。そして、とある出来事がきっかけでサクラに向かって「あんたなんかキライ」と叫び、号泣するアサミ。そんなアサミに、それでもずっと寄り添うサクラ。そして、そんな2人の様子を遠くから見守るスタッフと利用者さんたちの姿が深く印象に残る作品でした。
終わってみれば、3本を通して2時間を超える公演となりましたが、転妻さんやitoのスタッフさんも加え、下は小学6年生から上は60代(?)までの方が役者として出演するお芝居はリアリティもたっぷりで見応え充分。最後まで楽しむことができました。
地域の“ヒト”に光をあてる北上市民劇場、2年目の挑戦はこうして幕をおろしましたが、そうやって眺めて見れば、私たちの周りにいるあのヒトも、このヒトも、ステキなお芝居になりそうな……。
来年はどんなお芝居が見られるのか、乞うご期待!
(了)
アイムヒア~ここが私の生きる街~
開催日/2022年3月12日(土)・13日(日)
会場/北上市文化交流センター さくらホール 中ホール
開場・開演/13:30・14:00
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