Une seule wedding produce (アンスール)
フリーランスウエディングプランナー 小山美衣子(こやま みいこ)
地元で結婚式を挙げたい……。そんな気持ちに寄り添いたい。
「そうか! 私がお客さまのところに行ってウエディングをプロデュースすればいいのか!」
小山美衣子さんが2015年1月1日に岩手県で初となるフリーのウエディングプランナーとなったのは、そんな“気づき”がきっかけでした。
奥州市にあるホテルでウエディングプランナーとして活躍していた小山さんに転機が訪れたのは、東日本大震災後、被災された沿岸地域の方のウエディングをお手伝いしたとき。
「奥州市は沿岸地域からのアクセスが良いこともあって、私が勤めていたホテルでも被災地の方が結婚式を挙げられていました。
私も何組かお手伝いさせていただきましたが、お話をうかがっていると、お家を流されたり、ご家族やご友人を亡くされたり……。
みなさん、本当に大変なご苦労をされていて、そうしたなかで何もない状態からのスタートということで、私ももっともっとお客さまに寄り添っていろいろなご提案をさせていただきたいと思って、ウエディングのお手伝いをさせていただきました。
ただ、お話をうかがっていると、結婚式の会場も流されたので結婚式を挙げるとなると内陸に行くしかなくて、『本当は地元で結婚式を挙げたい』というみなさんの想いがひしひしと伝わってきました」(小山さん)
そういう想いにもきちんと寄り添いたいと思い、小山さんは10年間勤めていたホテルのウエディングプランナーの職を辞し、2015年1月1日から地元・北上市を拠点にフリーのウエディングプランナーとして活動することに。
大震災後、被災地の方のウエディングを担当してから、およそ3年の時間が過ぎていましたが、それにはある理由がありました。

同店は、仕事人図鑑第18弾でもご紹介。詳細はこちら!



ダイナミックに入り口に飾られた秋色紫陽花がゲストにも好評だったそう。
結婚式って、もっと自由でいい! “会場”という枠を飛び越えて。
「フリーになるまで3年もかかったのは、いざフリーになろうと思っても、当時は岩手でフリーのウエディングプランナーをされている方がいなくて、参考になる事例も、情報もなかったから」(小山さん)
最終的に小山さんの背中を押してくれたのは、東京で行われたセミナーで講師として登場したフリーのウエディングプランナーの言葉でした。
「結婚が決まると、式場から探すのが日本ではポピュラーですが、欧米のウエディングはプランナーから探します。
しかも、欧米のプランナーは無所属なので、 会場の【プラン】というのを気にせずに会場探しのお手伝いができる。お二人のスタイルに合わせて、 カフェ、レストラン、ペンションなどはもちろん、屋外でやったりしてもいい。
さらに、お好みのカメラマンをセレクトしたり、ヘアメイクを知り合いに依頼したりすることもできる……。
そのようなお手伝いができるのも、無所属のフリープランナーだからこそだと知って、『岩手で誰もいないなら、私がやってみよう!』と思って、フリーに転身することに決めたんです」(小山さん)
2015年当時、岩手にはフリーのアナウンサーや司会者はいましたが、フリーのウエディングプランナーというのは例がなく、小山さんが「フリーになる」と周りに宣言すると、同僚たちもびっくりしたそう。
しかし、 誰もが想像すらしなかった「フリーになる」という選択をして、小山さんの迷いはなくなりました。 そこから小山さんは、お客さまにフリーのウエディングプランナー でも安心してご利用いただけるよう、知識を身につけるため多数の資格を取得。
そして、「お二人の気持ちにずっと深く寄り添う」という、自分が理想とするウエディングプランナーの道を突き進むことになります。

お二人は運命的な出会いを果たし、岩手で結婚式を挙げることに。
動物好きなお二人が選んだのは、岩手県一関市にある「館ヶ森アーク牧場」でした。

披露宴会場は新婦さんが幼い頃、よく遊びに来ていた流れるプールがあった場所。
新郎の「けんじ」さんと同じ名前だったのも不思議な縁。
前日は大雪となり、八丈島から訪れた方々に雪景色を見せられたのもサプライズに。
被災地でお手伝い。「たかたウエディングプロジェクト」始動。
フリーになった小山さんを支えてくれたのは、ホテルのウエディングプランナーとして10年の間に培った“つながり”。
かつてウエディングのお手伝いをした方の兄弟や姉妹、あるいは友人などが小山さんを信頼して、ウエディングのプロデュースを依頼してくれたのでした。
さらに独立してすぐに立ち上げたホームページが、「フリーになる」きっかけとなった被災地との“つながり”を生む結果に。
「ホームページを立ち上げるにあたって、ホテルに勤めていたときに思った『被災地でウエディングのお手伝いをしたい』という私の気持ちも書かせていただきました。
それを見てお問い合わせいただいたのが被災地の陸前高田の方で、その方は『結婚式を通して地元の良さを伝えたい』という想いをお持ちでした。
私がフリーになったのも、私が大好きなウエディングプランナーの仕事を通じて、被災地のお役に立ちたいと思ってのことでしたから、お問い合わせをいただいたときは本当にうれしかったです」(小山さん)
「たかたウエディングプロジェクト」と銘打って2015年11月からスタートした同プロジェクトは、翌年6月の結婚式の開催に向けて、新郎新婦お二人の強い想いと相まって地域を巻き込み発展。
小山さんは何度も陸前高田に足を運び、打ち合わせを重ねながら、お二人とともにお二人の想いをカタチにするべく、さまざまな企画を提案しました。
新郎さんが九州出身ということで、参列者は九州や関東からも。そこで参列者に再建した陸前高田を見ていただこうと、ウエルカムスペースは整備中の防潮堤が見える場所に。
祝言は陸前高田に古くから伝わる形式にのっとり、進行も地元の方が担当。料理や引き出物・引き菓子も地元のモノにとことんこだわり、さらに陸前高田を紹介する“しおり”は新郎新婦お二人が担当。
新郎さんの故郷・宮崎とコラボしたオリジナルのギフトカタログも地元にこだわり、新郎さんが生産者さんに直接取材に行くなど、陸前高田“愛”が詰まったギフトになりました。
結婚式を通して地元の良さを伝えたい……。そんなお二人の想いをカタチにしたウエディングは、多くのメディアでも取り上げられるなど大成功。
「参列者はもちろん、地元の方々にも祝福していただきました。私にとっても忘れられない結婚式となりました」(小山さん)




料理長特製の特別メニューが披露宴を彩りました。



結婚式を通して町を盛りあげていこうという企画。商店街のお店が協力して、山田町で結婚式を挙げようとするカップルのために、
人前式・神前式・披露宴ありなし・フォトプランなど、お客さまのご要望に合わせてさまざまプランをご用意。
小山さんは、フリーのウエディングプランナーの経験を生かし、こちらのプロジェクトもサポートしています。
そこに集まったみんなが、チームとしてひとつになる喜び。
大好きなウエディングプランナーの仕事で被災地の方のお手伝いがしたい……。
長年抱いていたその想いをようやくひとつカタチにすることができた小山さんは、同時にフリーでやっていくことに対する大きな自信も手にしました。
「お二人の想いをお聞きしながら本当にゼロから、ホテルではあり得ない場所探しからのスタートでしたが、メイクさん、カメラマンさん、お花屋さん、司会者さんなど、ウエディングを支えてくれたいろんなパートナーさんと、みんなで協力してひとつのチームとしてお二人に喜んでいただけるウエディングをカタチにすることができた。それを実感できたことも、私には貴重な経験となりました」(小山さん)
多くのメディアでも紹介された「たかたウエディングプロジェクト」がきっかけで小山さんへの依頼も増え、現在は地元の方はもちろん、岩手出身で今は関東で暮らす方からの問い合わせも多いとのこと。
さらにウエディングも、お二人の想いに寄り添い、ホテルの会場はもちろん、カフェ、レストラン、高原、ペンション、キャンプ場、温泉旅館、神社、お寺、船の上、海の目の前、ご自宅などなど、さまざまな場所で開催。
フリーになってから40組を超えるウエディングをカタチにしてきた小山さんは、もちろん北上市でもお二人の想いに寄り添った楽しいウエディングをカタチにしています。
そのウエディングが行われたのは、昨年の10月。会場は、なんと北上市にある総合運動公園の陸上競技場!
「『自分たちらしい結婚式をしたい』という想いがまずあって、しかもお二人はマラソンが縁で結ばれたということで、“マラソン”をテーマにしましょうと提案したんです。そしたらお二人もおもしろがってくださって(笑)」(小山さん)
さて、気になるその内容は……。

岩手県一関市にある名勝・猊鼻渓で行う舟上神前式。舟下りの舟を二艘並べて行われましたが、
舟下りを楽しむ一般の観光客も手を振り、お二人の結婚式を祝ってくれたそう。

軽井沢のような自然豊かな場所でカジュアルなガーデンウエディングがしたいというご要望に応えて、
岩手県八幡平市にある安比高原で実現。

「地元のものを使って地元らしく」にこだわりました。新郎家さんの菩提寺で行った仏前式も厳か。
ドレスコードは「ジャージ」。感動のフィナーレは、笑顔のゴールイン!
北上総合運動公園の陸上競技場を会場に選んだのは、お二人がよく利用している場所だから。さらに、新婦さんのおじいちゃんが車イスに乗られているため、車イスでの移動がラクな近くの場所というのも決め手になったそう。
さっそく北上総合運動公園に問い合わせると、最初こそ驚かれたそうですが、二つ返事でOKに! こうして「マラソン」をテーマにしたウエディングが幕を開けます。
競技場内はハイヒールがNGのため、当日のドレスコードは「ジャージ」(または動きやすい服装)。
人前式は室内トラックで。施設内にあるシャッターがあがると、ウエディングドレスとタキシード姿で、笑顔も満開な新郎新婦が登場。
バージンロードは、ハードルとお二人の幼い頃からの写真をプリントしたアイルランナー(布製のバージンロード)で手づくり。
「1位」「2位」「3位」の表彰台を積みあげてつくった祭壇の前で牧師役を務めるのは、マラソン仲間。
指輪は、ゲストも参加する“リング”のリレーで新郎新婦の手に。
拍手代わりに鳴らすホイッスルも高らかに鳴り響き、続いてお色直しは普段のランニングスタイルに変身。
その後、1周400mのトラックに会場を移して行われたのは、バトンリレー。ゲストから選抜されたランナーたちが幸せのバトンをつなぎ、アンカーの新郎新婦に手渡すと、お二人は足取りも軽く笑顔でゴールイン!
みなさんが楽しそうに走る様子は、もちろん競技場のオーロラビジョンに映し出され、風が強く雨も降ったため、披露宴会場(瀬美温泉)で待機するおじいちゃんのお祝いコメントをサプライズで流したときは、新婦さんの目に涙……。
「当日は雨になってしまいましたが、マラソンをやっている方たちが多かったので、みなさん気にする様子もなくバトンリレーを楽しんでくださっていたので安心しました(笑)
競技場の関係者のみなさんもハードルでバージンロードをつくるなど、いろんなアイディアを出してウエディングを盛りあげてくださったのもうれしかったですね」(小山さん)
マラソンが縁で結ばれたお二人のマラソン“愛”がたっぷり詰まったウエディングは、たくさんの笑顔に包まれて、こうして幕をおろしました。








最後は新郎さんが新婦さんをお姫さま抱っこしてゴールイン!

サプライズの祝福コメントが競技場のオーロラビジョンに流れました。

結婚式の後も、お二人の人生に寄り添うパートナーに。
小山さんが独立して立ち上げた「Une seule(アンスール)」という屋号は、「オンリーワン」を意味するフランス語から。
お二人の人生に深く寄り添い、つくりあげる、お二人だけのオンリーワンの結婚式……。
それが、小山さんがめざすウエディングです。だからこそ、お二人の話にじっくり耳を傾けるという小山さん。
「ひとりひとりドラマがあって、生きてきた背景も違います。ですから最初にお二人の人生感、家族のこと、これまでのこと、これからのことなどいろいろお聞きしますし、私のこともお二人にお話しています。
ときには友だちにも言えないこともお聞きするので、コミュニケーションをすごく大切にしています。
そうやって会話を重ね信頼関係を築きながらお二人のことをきちんと知ったうえで、どんな結婚式がいいか、会場はどこがいいか、お二人と一緒になって考え、お二人の一生に一度の結婚式をつくりあげていくのが私のスタイルです」(小山さん)
最初のご相談から結婚式まで3カ月、あるいは半年、長い場合は1年……、仲の良い友達以上に濃密な時間を過ごすため、「お二人とひとつの家族に勝手になっているような感じ(笑)」と語る小山さんは、そうして育んだ“つながり”を結婚式後も大切にしています。
「結婚式後、引き続きお二人とはマメに連絡を取り合っています。一緒にランチに行くこともあるのですが、そうすると『妊娠しました!』とか『家族が増えました!』とかご報告をいただいたりするのです。
私は結婚式の写真にはものすごくこだわっていて、『結婚式の写真がよかったから、お宮参りの写真も撮ってほしい』とお願いされたことがあって……。
そのとき気づいたのです。お宮参りには家族みんなで行って、おじいちゃんが立派なカメラを持っていたりもするのですが、祈祷のときにはみんなでお祈りするので写真を撮るヒトが誰もいないんですよね。
そういう大切なシーンをきちんとした写真で残してあげたい……。
スマホでも手軽に撮れる時代ですが、ヒトに頼むとブレていたり、ピントがあっていなかったりする場合もあるじゃないですか。写真はずっと残るものだし、将来お子さんも見るものですから、きちんとした家族の写真として残してあげたいなと思って……」(小山さん)
妊娠してお腹がふっくらした頃に撮る「マタニティフォト」、生まれた赤ちゃんの記念写真を撮る「ニューボーンフォト」、さらにお宮参り、七五三……。そうした家族の歴史の節目となる瞬間をキレイな写真で残すサービスをはじめたのも、そんな小山さんの想いが原点でした。

産後の体調にも配慮し、保育士の資格を持つママカメラマンが撮影するとのこと。

お二人にとって一番ハッピーな時間を、ともに過ごせる幸せ。
「結婚式で終わりではなく、その後に続くお二人の人生を応援し続けるパートナーでありたい」と語る小山さんは、お金の心配などで結婚式を挙げないというカップルにも寄り添います。
カフェや自宅で行うウエディングをはじめ、思い出の場所で写真だけ撮るフォトウエディングなどシンプルなプランもご用意。
「ウエディングは自由でいい。お二人が納得しているなら、結婚式を挙げないという選択ももちろんあっていいと思います。
ただ、女性なら誰もが結婚式というものへの憧れは持っていると思うのです。その気持ちを男性は大事にしてほしいな、と思います」(小山さん)
思い出の場所で写真を撮る、レストランで家族と会食をする、キャンプ場やペンション、船の上や海の目の前で結婚式をあげる……。それぞれのスタイルで、人生で一度っきりの大切な瞬間のために、二人が意見を言い合い、ときにケンカもしながら一緒に準備する時間も、「お二人のこれからの人生にとってとても大切な時間」なのだと小山さんは言葉を続けます。
「結婚式って、お二人にとってとても幸せな瞬間ですよね。それに向けて準備する、お二人にとって一番ハッピーな時間を、お二人とともに過ごせるこの仕事は、とてもやりがいがあるし、何より私自身も楽しいんです」
そう言って微笑む小山さん。
大好きなウエディングプランナーの仕事で被災地の方のお手伝いがしたい……。
そんな想いから、岩手県で初となるフリーのウエディングプランナーとなった小山さんは、お二人の想いにとことん寄り添いながら、オンリーワンのウエディングをひとつひとつ丁寧にカタチにしています。
その活動が認められた成果でしょう。
「現在は式場やホテルなど、会場のウエディングプランナーさんとも一緒にお仕事しています。
会場さまと、そこで結婚式をされるお客さま、みなさまをサポートするサービスです。
素敵な思い出があふれる結婚式ができるように、会場さまとお客さまには、最初のお打ち合わせから挙式が終わるまで、一丸となりお付き合いしていきたいです」
と話す小山さん。
お二人の人生をずっと応援し続けるパートナーに……。変わらない想いを胸に、小山さんはこれからもお二人の人生に寄り添い続けます。


ドレスやタキシードをレンタルできるプランなどもあり、詳細はこちら!


生徒は来年プロの現場に巣立つ2年生、男子2名を含む29名。これからいよいよ具体的なプランづくりに入っていくとのこと。
がんばれ、未来のウエディングプランナー!
◇小山さは、ラジオ番組「夢を語る大人たち」にも出演! 興味のある方はこちら!
(了)

Une seule wedding produce (アンスール)
Tel/080-9017-4893
Mail/info@uneseule-wedding.com
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