自然派ワインと出会えて今がある。想いを込めて野菜を育てる生産者さんと、これからも。

自然派ワインと料理の店  Bon Bar(ボンバル)
店長・ソムリエ
菊池 亮(きくち りょう)

自然派ワインのおいしさに魅せられて。

 北上市内の中心部、飲食店が軒を連ねる青柳町の万世橋のたもとに、そのお店はありました。

 「Bon Bar」(ボンバル)という名のそのお店は、白を基調とした清潔感のあるエントランスが印象的で、螺旋階段に導かれて2階にあがり、ドアを開ければそこは青い光の世界……。全体を白で統一した落ち着きのある空間が、神秘的なその色合いをより一層鮮やかに浮かび上がらせてくれます。

 12月ともなれば、北上は午後5時には真っ暗になります。このお店は、午後6時にオープン。ドアを開ければ、いつでも青い光に包まれた世界をお楽しみいただけます。クリスマスの思い出づくりにも最適な空間ですが、「Bon Bar」の魅力はそれだけではありません。

 しかし、その話をはじめる前に、まずは同店自慢のワインをどうぞ。「北上でおいしいワインを飲むなら、ここ」と多くのワイン好きに支持されているワインは、すべてオーガニックにこだわった自然派ワインです。

「いろんなワインを飲んでみて、自然派ワインがメチャクチャおいしかった。自分にいちばん合っていると思ったんです。コクや渋みも少ないのでスッと入ってきて飲みやすいし、たくさん飲んでも次の日がラクだなと私は感じたんですよね」

 そう語るのは、「Bon Bar」の店長で日本ソムリエ協会認定のソムリエでもある菊池亮さんです。亮さんと自然派ワインとの出会い……。それがなければ、「Bon Bar」の誕生もありませんでした。


自然派ワインが教えてくれた“本物”の意味。

 「Bon Bar」が誕生したのは、今から3年前の2015年11月18日のこと。亮さんを信頼して「店は任せるから好きにやっていいよ」というオーナーさんのひと言がきっかけでした。

「オーナーにそう言われて、自然派ワインとオーガニック野菜にこだわった店をつくろうと思ったんです」(亮さん)

 「自然派ワイン」と「オーガニック野菜」……。当時はどれも北上では耳なじみのないもので、それにフォーカスしたお店もありませんでした。「そんなコンセプトで経営は大丈夫?」という周りの不安をよそに、亮さんはオープンに向けて動き出します。

 そもそも、なぜ亮さんが「自然派ワイン」だけでなく、「オーガニック野菜」にもこだわるようになったのか……。きっかけはもちろん、「自然派ワイン」との出会いです。

 亮さんは、自然派ワインがなぜこんなに飲みやすいのか。なぜおいしいと感じるのか。自分に合うのはなぜだろうと思って勉強していくうちに、自然派ワインの魅力にどんどん惹かれていきました。

「自然派ワインは葡萄を育てる段階から農薬、化学肥料、除草剤、殺虫剤は使いません。さらに人工の酵母も使わず、その土地にある天然酵母を使って発酵させ、醸造も酸化防止剤など人工的な添加物を極力使わないで行います。

 ですから、その土地の土壌や風土、それに携わるヒト、近くに川が流れているのかいないのかでも味が変わりますし、天候でも変わる。それらを含めて“テロワール”というんですが、そういったその土地その土地の特徴がいちばん生かされる、飲んでいちばんわかるワインが自然派ワインなんですよ。

 自然派ワインのことを勉強していくうちに、それが本来のワインのあるべき姿なんじゃないかと思うようになったんです。

 それに、農薬や化学肥料を使わないでつくる体にいいものこそ体がいちばん喜ぶものだし、環境にもやさしい。

 結局、そういうものこそ本物なんじゃないかと思うようになったんです」(亮さん)

 知れば知るほど自然派ワインの虜になっていった亮さんが、同じように農薬や化学肥料を使わないで育てられた「オーガニック野菜」に興味を持つようになるのも自然の流れでした。

自然派ワインは、メニューに載っている定番以外にもご用意。亮さん自身が年間100種類以上の自然派ワインを試飲し、選び抜いた逸品を取り揃えているそう。好みの味わいがある方は、亮さんに尋ねてみてください。とっておきの1本を選んでくれるはずです。
ヤサイノイトウさんの野菜で彩る「新鮮野菜サラダ」は、目の前で店員さんがパルミジャーノチーズを雪のようにたっぷりかけてくれるのがポイント。見てるだけでテンションがあがります

希少なお肉を使った「きたかみ真生牛のロースト」は亮さんおすすめの1品。奥にはビールも見えますが、「Bon Bar」はビールをはじめ、日本酒、焼酎、ウィスキーなどのドリンクも充実。ワインが苦手な方もどうぞ。

オーガニック野菜の生産者さんはどこに?

 「Bon Bar」のオープンに向けて、亮さんは近隣でオーガニック野菜の栽培に取り組む農家さんを探し回りました。しかし、今でこそオーガニック野菜を育てる農家さんたちも少しずつ認知されてきていますが、当時は本当に世に知られている方は少なく、探すのも大変だったといいます。

「ネットで調べるのはもちろん、それこそ友人に聞いたり、知人から紹介してもらったりしました。そこからそういう方につながったら自分で農場に足を運んで、自己紹介からはじめて、『自然派ワインとオーガニック野菜にこだわったお店をやりたい』というようなお話をして、という感じで地道に探しました」(亮さん)

 そんな亮さんに追い風が。たまたま同じ時期にオーガニック野菜を育てる農家さんたちが集うイベント「オーガニックフェスタ」が開催されたのです。

 亮さんはさっそく会場に足を運び、「これは!」という農家さんに目星をつけました。そして、イベント終了後に改めて農場に自ら足を運び、直接会話することで見事協力してもらえることに。

 こうして、「自然派ワイン」と「オーガニック野菜」を使った料理のマリアージュが楽しめるお店「Bon Bar」は無事オープンにこぎつけることができました。 

 そんなある日、ひとりの男性が店を訪れます。北上市役所農林部 農業振興課の小田島 孝さんです。この出会いが、亮さんのさらなる頼もしい追い風となりますが、それはもう少し先の話。最初の印象は……。

スパークリングワインを注ぐ亮さん。
「北海道産白子バター」は濃厚でとろけるような白子の味わいが、すっきりとしたスパークリングワインと好相性です。
「Bon Bar」にはカウンター席もあり、おひとりでも気軽に利用できるのも魅力です。

北上の生産者さんと出会い、さらにひろがる想い。

「小田島さんがうちに来てメニューを見たとき、『すごい悔しかった』ってあとで言われたんです。『なんで北上のお店なのに、北上の生産者さんの野菜がないのか!』って(笑)」(亮さん)

 当時、「Bon Bar」で使用していた野菜は、花巻市東和町で有機農法に取り組む「ひばり農園」さんや、金ヶ崎町でオーガニック野菜をつくる「菜の花畑」さんが中心でした。

 もちろん、亮さんは北上市内でもオーガニック野菜をつくる農家さんを探してはいましたが、当時の亮さんのネットワークではそこまでたどり着くことができませんでした。

 一方、小田島さんは仕事柄、北上市でオーガニック野菜に取り組む農家さんをよく知っています。だからこそ北上にできたオーガニック野菜を使ったお店には、地元の生産者さんがつくる野菜が使われているだろうと楽しみにして行った矢先、メニューを見て北上の生産者さんがつくった野菜がないことを知り、悔しい気持ちでいっぱいになったのでした。

「それがきっかけで小田島さんに北上の生産者さんを紹介してもらったんです。『こういうヒトがいるよ』『このヒトもがんばってるよ』『ぜひ行ってみて』と言われて、『わかりました!』って感じですぐ訪ねました(笑)」(亮さん)

 現在、「Bon Bar」では姉妹店の和食ダイニング「きたかみ川」も含め、当初からお付き合いのおある「ひばり農園」さんや「菜の花畑」さんをはじめ、「神楽農園」(和賀町岩崎新田)さん、「ヤサイノイトウ」(更木町)さん、「やさいやねこのて」(鬼柳町)さん、「きこりの菊池農園」(立花)さん、「ファーム佐藤」(相去町)さんなどがつくるオーガニック野菜や米などの農作物を使用するなど、北上市内の生産者さんともガッチリつながっています。

 また、自然派ワインと触れ合う会や、生産者さんとつながるイベントなども開催し、その魅力をひろげる取り組みも積極的に行っています。今年の10月には、北上の生産者さんの協力も得て、東京で料理人として活躍する親友と東京・赤坂で北上の食材の魅力を伝えるイベントも開催。そちらも大盛況でした。

エントランスでは、「Bon Bar」で使用する農作物を育てる生産者さんの写真がお出迎え。それぞれのこだわりや想いも伝えています。
ヤサイノイトウさん自慢の野菜を使った「無農薬野菜スティック」は味噌とマヨネーズで召しあがれ。野菜そのもののおいしさをたっぷりご堪能いただけます。
「館ヶ森高原豚あぶり焼」は、コクのある赤身とさっぱりとした脂身の味わいが絶妙です!

生産者さんと飲食店が助け合う未来に、願いを。

「実際に農家さんのところに行って話を伺ったり、自分でもいろいろ勉強したりしているのでわかるんですが、本当にオーガニックな野菜をつくるのは大変なんですよ。

 それでも生産者さんは、健康とか環境のことを考えて、こだわりや想いを持って野菜や米を育てている。農薬や化学肥料はもちろん、機械にもほとんど頼らず自分たちの手でやっています。

 ですから収穫量も少ないし、カタチも不揃いで、なかなか一般のお店には出回らない。本当に、体にいいおいしいものをみなさんつくっていらっしゃるんですけど、それが世の中になかなかひろまっていかないのが現状です。

 ですから私は『Bon Bar』を通して、多くのヒトたちに自然派ワインやオーガニック野菜に興味を持ってもらいたいし、それをつくるヒトたちのことをもっともっと知ってもらいたいと思って取り組んでいます。

 そうやって生産者さんと飲食店がお互いに助け合って、みんながwin-winの関係になれるようにしていかなきゃいけないと思うんですよね」(亮さん)

 「自然派ワイン」と「オーガニック野菜」にこだわった「Bon Bar」というお店をつくった亮さんは、生産者さんと飲食店がお互いに助け合って切り拓く未来を願って、今日も訪れるヒトを笑顔で迎えます。

子どものころは明るく元気で目立ちたがり屋だったという亮さん。その笑顔に子どものころの面影が……。

 世の中はいよいよクリスマス。「Bon Bar」では、オーガニック野菜をはじめ、厳選した素材を使った「本日のおすすめメニュー」がクリスマス仕様となり、みなさまをお迎えするとのこと。

 今年のクリスマスシーズンは、さまざまな想いやこだわりが詰まった素材を使用した料理に舌鼓を打ちながら、自然派ワインのやさしい味わいに心地よく酔い、大切なヒトとゆったり過ごすひとときはいかがでしょう。窓の向こうには、青い光に包まれた流れ星が、ときよりご覧いただけるはず。その星に願えば、きっと……。

 ちなみに、12月24日(月)は「Bon Bar」はお休みとなります。亮さんのご予定を伺うと……。

「妻の誕生日が12月23日なんですよ。ですから24日は妻の誕生日とクリスマスを一緒に祝います。料理も私がつくるんですよ」と言って照れ笑い。

 さらに、お子さんの話になると……、

「5歳の娘と6カ月の息子がいるんですが、クリスマスにプレゼントをこっそり枕元に置くのも私の役目なんです。

 去年は雪が積もっていたので、夜中にこっそり窓の外に足跡を残しておきました(笑)。娘が朝起きると窓辺に呼んで足跡を見せてあげたんです。『ほら、足跡があるよ。やっぱり昨日、サンタさん来たんじゃない?』って言ったら、『ホントだっ!』って(笑)。

 私は今もサンタさんがいるって信じているんですけど、子どもたちにもずっと信じていてもらいたいんですよね。ですから、今年もなんかやらなきゃと思っているんですが、何をやるかは考え中です」

 そう言って微笑む亮さんは、よき夫であり、やさしいパパの顔でした。


◇亮さんが、東京で料理人として活躍する親友と東京・赤坂で開催した北上の食材の魅力を伝えるイベントの詳細はこちら。

(了)


自然派ワインと料理の店  BonBar(ボン バル) 

岩手県北上市諏訪町2-1-27 アンブロビル2階

Tel/0197-72-7744

営業時間/18:00~24:00

定休日/日曜日

2018-12-18|
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