いざ、展勝地の“桜”見物へ! 春の陽気に誘われて動物たちも……。そこは先人の想いが満開!

企画展「展勝地にかかわった北上の先人」見聞録。

 まだまだ冬まっ盛りの北上市ですが、晴天に恵まれた2月14日の最高気温は11.8℃! 1週間前の最高気温が-2.2℃だったことを思えば、春のようなポカポカ陽気です!

 さらに時間をさかのぼると、2月4日には関東地方で「春一番」が吹いたと気象庁が発表。これは1951年の統計開始以来、最も早く、昨年と比べると18日早かったそう。

 今シーズンは雪が多く、まだまだ予断を許しませんが、それでも春の足音が少しずつ……。

 となれば、楽しみになってくるのが「桜」でしょう!

 というわけで、世の中がバレンタインで浮かれている2月14日、筆者も春のポカポカ陽気に誘われて、浮かれ気分で北上市街地から西へ……。

 晴れ渡る大空、どこまでも続く雪原と遠くに見える山並みの美しさにワクワクしながらクルマを走らせると30分ほどで見えてきたのが、レンガ造りの瀟洒な佇まいが印象的な建物。

▲図書館と博物館を併設した「北上市役所 和賀庁舎」。

 筆者がお邪魔したのは、こちらの1階にある「北上市立博物館 和賀分館」。展勝地にある同博物館の本館は北上市の特徴的な6つの時代にフォーカスし、深く掘り下げて紹介しています。

 一方、こちらの分館は旧石器時代から近現代までの北上市を通史としてひろく学べる「歴史コーナー」と、北上市の動植物はもちろん化石や鉱物なども紹介する「自然コーナー」があるのが特徴。

▲北上市立博物館 和賀分館の館内の様子。

 なかでも「自然コーナー」にある動物のはく製や昆虫の標本は子どもたちにも人気で、この日も小さなお子さんを連れたご家族の姿が……。

 しかし、そちらも大いに気になりますが、筆者がまず向かったのが3月7日まで開催されているという企画展!

それぞれの“できること”で展勝地の発展に
貢献した“ヒト”にフォーカス!

 北上市といえば、みちのく三大桜名所に数えられる「展勝地」が今年開園100周年! というわけで北上市立博物館でも、展勝地開園100周年記念として『展勝地にかかわった北上の先人』と題した企画展をただいま絶賛開催中!  

 昨年は本館にて展勝地の歴史を写真とともに振り返る「展勝地のおもひで」展も開催しており、それに続く企画展の第2弾です。(興味のある方はこちら! ⇒ 「展勝地のおもひで」展 記事の後半でご紹介しています)

▲昨年、本館で開催された企画展「展勝地のおもひで」の様子。

 さて、「どんな“桜”のエピソードに出会えるのか」楽しみにしながらフロアに入ると、出迎えてくれたのは今回の企画展を担当する北上市立博物館の川村明子さんです。

 展勝地の移り変わりを懐かしい写真とともに紹介した前回に続いて開催された今回は、展勝地にかかわった“ヒト”にフォーカスしている点が特徴です。

 しかも、展勝地の生みの親である沢藤幸治氏(1881~1960年)だけでなく、さまざまな立場で展勝地の発展に貢献された方々と出会えるところが魅力。

「それぞれの立場で国見山を含めた展勝地の発展に貢献した先人たちの想いに触れることができる企画展です。これを機会に今年100周年を迎える展勝地のあゆみを見つめ直し、そのうえで春の桜を楽しんでいただけたら……」

 今回の企画展に込めた想いについて、そう語る川村さんの言葉通り、展示されたパネルを見ていくと、それぞれの“ヒト”が、それぞれの立場で自分が“できること”に取り組んでおり、展勝地の魅力をさらに深めてくれています。

 それでは、気になる展示を見ていきましょう。最初に登場するのは、もちろんこの方!

沢藤幸治(1881~1960年)

 「沢幸(さわこう)さん」の愛称で親しまれた沢藤幸治氏は、北上市となる前の黒沢尻町長として郷土の発展に尽力。荒れ地となっていた展勝地に桜の木を植え、日本一の桜の園にしようと人々に呼びかけ活動するなど、現在の展勝地の礎を築いた方です。

 今回のパネル展示では、展勝地のあゆみとともに沢藤幸治氏と桜にまつわるエピソードや、展勝地にかける想いが伝わる逸話を紹介。そうした中でも、川村さんが一番魅かれるのは……。

「今でこそ観光に力を注ぐのは当たり前ですが、沢藤幸治さんたち先人は100年も前から観光産業に注目し、地元に観光地をつくることでヒトを呼び、地元を盛り上げようと取り組んでいたところに強く魅かれます。

 洪水で荒れた土地に自分たちの手で桜を植え、日本一の桜の名所にしようと『展勝地』と名づけ、その想いが受け継がれ、しかもずっとそれを発信し続けてきてからこそ、今の展勝地があるのだと思います。

 100年前からそれを見据えて取り組んでいた、その先見の明には本当に驚かされます」(川村さん)

 さまざまなエピソードを紹介したパネルの1枚には、沢藤幸治氏が大切にしていたという言葉も……。

宮 そめ(1888~1965年)
藤原八弥(1914~1998年)

 続いて登場するのが、1921(大正10)年の開園当初の計画で「展勝地の核心をなす」と表された国見山に、白亜の観音像を建てた宮そめ氏と藤原八弥氏。

 宮そめ氏は沢藤幸治氏の妹で、晩年は国見山のふもとにある極楽寺の堂守に。一方、藤原八弥氏は教員から画家となり展勝地に私立美術館も開設。郷土芸能の他、展勝地や国見山の美しい風景を多く描かれた方です。

 かつて藤原八弥氏は沢藤幸治氏と会うたび、「朝明けは美しい! 朝の川岸から見た展勝地を描いてみなさい」と言われたそう。川岸から北上川越しに望む展勝地とその奥に悠然と佇む国見山の風景は、ご自身もその美しさを絶賛されています。

▲川岸からの眺め。

 また、それと同時に桜並木を見下ろす陣ヶ丘からの眺め、国見山から見渡した一円の風景……、藤原八弥氏はそれらすべてが美しく「天地の華」とも表現されるほど。

▲陣ヶ丘から眺める北上川と桜並木。

 今から1000年以上も前、平泉の仏教文化が華開く200年以上も前に栄えた大規模な山岳寺院の名残をとどめる国見山。標高244mの頂上からは悠々と流れる北上川と、その向こうに広がる北上市の街並み、さらにはその奥に横たわる奥羽山脈という、雄大な風景を見渡すことができます。

 展勝地エリアにはこの国見山も含まれており、美しい桜とともに雄大な風景と悠久の時を超えた歴史ロマンに触れられる国見山が「展勝地」の魅力をさらに深めると先人たちは考えたのでした。

 筆者が東京から北上市に移り住んだのが2年半ほど前。当時、北上市に来て間もないときに国見山に登ったのですが、「なんでここに観音像があるんだろう?」と不思議に思いつつ、それ以上踏み込んで調べたりしませんでした。

 しかし、今回改めて宮そめ氏と藤原八弥氏の取り組みを紹介した展示を見ていると、国見山の頂上に建つ白亜の観音像に込められた想いに触れられたような気がしました。感謝<(_ _)>

飯田研三(1903~1971年)

 最後に登場するのが、国見山やそのふもとに生える珍しい薬草を通して国見山文化の啓もうとともに、国見山の自然環境保護活動に取り組んだ飯田研三氏。

 国見山は植物の宝庫で、種類は600を超えるそう。しかし、そこにはなぜか西日本が分布域の「シマカンギク」や「ノモモ」といった薬草や、和紙の原料となる植物「コウゾ」の姿も……。

「国見山は1000年以上も前に大きな寺院がありましたが、そこで修行する僧たちが各地から持ち込んだ薬草が根づいたと考えられます」(川村さん)

 飯田研三氏はこうした国見山特有の植物相を守り育てながら、国見山に華開いた古代仏教文化との関連も踏まえて、その重要性を発信していこうと活動された方だそう。

 展示パネルでは国見山の珍しい薬草の他、「国見山七不思議」といわれる不可思議な植物も紹介されており、ご興味のある方は、ぜひ「北上市立図書館 和賀分館」へ。

他にも気になる先人たちがいっぱい!

 今回の企画展「展勝地にかかわった北上の先人」は、以上の4人の方の紹介で終わります。が、川村さんは……。

「まだまだご紹介したい先人がたくさんいらっしゃいますし、今回ご紹介した4名の方も掘り下げれば、さらに面白い発見があります。興味のある方は、ぜひ博物館までお問い合わせください」

 と最後にひと言。「北上市立博物館 和賀分館」には「北上の先人50人」を紹介するコーナーもあり、ご興味のある方は、ぜひ同博物館まで。

「全国さくらシンポジウム」も今春開催! みんなで次の100年へ。

 今回の展勝地の“桜”見物は、“桜”は“桜”でも展勝地の“桜”を育てた方たちの“想い”に触れる見物でした。

 筆者は「きたかみ仕事人図鑑」の活動を通して、展勝地の生みの親である沢藤幸治氏の取り組みと出会い、展勝地のことを少し勉強させていただきましたが、今回は展勝地の発展に尽力されたそれ以外の方々をさまざまな視点から知る貴重な機会となりました。

▲展示の最後は、みんなで桜のシールを貼るスペースも。1本はすでに満開!

 荒れた土地に桜を植え、日本一の桜の名所にしようと取り組んだ沢藤幸治氏はもちろんですが、その想いを受け継いで、さまざまな立場で自分たちが“できること”を通して展勝地の発展に貢献してきたヒトたちがいるからこそ、「今の展勝地があるのだな」と改めて感じました。

 展勝地開園100周年を迎える今春の桜は、余計にしみじみと眺められる予感……。

 4月22日(木)・23日(金)は北上市を舞台に2日間にわたって「2021全国さくらシンポジウム」も開催されます。

 先人たちが未来に託した展勝地を、みんなで次の100年へ。今回のシンポジウムには、そのために“できること”を考える貴重な機会となるだけでなく、それをみんなで全国へ発信できる舞台でもあります。

 果たして、どんな2日間になるのか、乞うご期待!

◇「2021 全国さくらシンポジウム in 北上」参加者募集! 詳細はこちら! ⇒ みんなでつむぐ次の100年へ! 4月に北上開催の「全国さくらシンポジウム」、参加者募集中!

(了)

★展勝地開園100周年記念企画展「展勝地にかかわった北上の先人」は2021年3月7日(日)まで!

北上市立博物館 和賀分館

岩手県北上市和賀町横川目11-160(北上市役所和賀庁舎1階)

Tel/0197-64-1756

利用時間/10:00~16:00(最終入館15:30)

休館日/12月~3月:月曜日(月曜が祝日の場合はその翌日)

    4月~11月:無休

    ※12月28日~1月4日は休館となります。

入場料/無料

2021-02-16|
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