話すことで誰かの役に立てるなら……。ひきこもりからの自立をめざす「Origin」の挑戦。

「Origin」が3周年。新たな決意を胸に、次のステージへ。

 その出会いは、2019年3月のこと。北上市で就職支援を行っている「ジョブカフェさくら」を取材したときに、「ひきこもりから抜け出し自立しようとがんばっている若者がいる」と聞き、「もし良かったらお話をうかがいたい」とお願いしたところ、インタビューが実現。そこでお会いしたのが、小菅 孝さんでした。

▲2019年3月に「ジョブカフェさくら」を取材したときの様子。写真前列右、ガッツポーズする男性が小菅さん。記事をご覧になりたい方は、写真をクリック!

 小菅さんの詳細は「ジョブカフェさくら」の記事をご覧いただければわかるため、こちらでは簡単にご紹介させていただきます。(記事はこちら! ▶▶▶ ジョブカフェさくら」の取り組み

 小菅さんは小学校のときのいじめから、ひきこもるように。その後ゲーム依存にもなり、さらに17歳のときには病気で入院することに……。しかし、自分のことを心配して声をかけてくれる他の患者さんや看護師さんとの交流を通して初めてヒトとのつながりを感じて「変わらなきゃ」と意識が変化し、ひきこもりから抜け出そうと決意しますが、最初はヒトと会うのが怖くてバスにも乗れなかったそう。

 それでも少しずつ努力を重ね、さまざまな相談施設やボランティア活動に参加する過程で10年ほど前に「ジョブカフェさくら」と出会い、やがてその縁から週3日・1日3時間の仕事もできるまでに変化。

 さらに、2018年には自らの発案で「ジョブカフェさくら」で出会った同じような境遇の仲間とともに、「Origin(オリジン)~帰れる所~」という会を立ち上げ活動。

「原点」という意味を持つ同会には、

●素の自分に戻れる場所

●今の気持ちを話せる場所

●集まったみんなからエネルギーをもらえる場所

●良いことも悪いことも何でも話せる場所

そんな場所になってくれたらという想いが込められており、「ジョブカフェさくら」のサポートを受けながら、月1回みんなで集まりおしゃべりをすることからスタートします。

 そして、その後は「CHALLENGE」をテーマに仲間と話し合いながらボランティア活動やさまざまなイベントの開催にチャレンジ。そうした活動を通して社会との接点をひろげ、少しずつ一歩ずつみんなで励まし合いながら自立をめざそうと取り組んでいます。

 小菅さんはそんな「Origin」の中心メンバーであり、コロナ禍で自由な活動が制限されるなかでも「Origin」のメンバーと出来る範囲でさまざまなチャレンジを続けています。

誰かの役に……。自分の体験談を語るセミナーを立案!

 10月28日(木)に開催された「若者セミナー Origin オープンセミナー」もそのチャレンジのひとつ。

▲今回は「ジョブカフェさくら」がある北上地区合同庁舎の会議室で開催。本来は8月に行う予定でしたが、コロナの影響で延期となり、この日の開催に。当日はテレビや新聞などのメディアも詰めかけるなか、関係者や一般の方などおよそ30名が参加しました。

 同セミナーは設立から3周年を迎えた「Origin」の次のチャレンジとして、「自分たちが話すことで誰かの役に立てるのなら……」との想いから小菅さん自ら立案。もう一人の仲間とともにひきこもり当事者として自分の体験談を人前で話すことで、ひきこもりに対する理解を深めてもらうとともに、悩んでいるヒトがいたら「Originでいっしょに」と語り掛けるものでした。

▲会場の入り口で今回のセミナー参加者を迎え入れる小菅さん。

 一般的に考えてみても人前で自分の人生を語るというのは勇気がいりますが、ずっとひきこもっていたため「ヒトと会うのが怖くてバスにも乗れなかった」と語っていた小菅さんや、人前で話せなかったと語るもう一人のひきこもり当事者の方にとっては、そのハードルは私たちが想像できないほど高かったことでしょう。

 しかも、子どもの頃にいじめられた経験、ネグレクト、対人恐怖症、働きたくても働けない日々、自己嫌悪、孤独と不安、一歩が踏み出せない焦り……、そうした辛い過去から見つめ直して、これまでの自身の体験を語ることは大きな勇気がいることだったと思います。

▲この日は「Origin」メンバーと関係スタッフがお揃いのTシャツを着てイベントを盛り上げていました。胸にあしらった「CHALLENGE」のワッペンと、背中のロゴも誇らしげ。

 しかし、今回手を挙げたお二人は緊張しながらも、誠実かつ率直に自身の体験を語っていたのが印象的でした。しかも、お二人に共通していたのが、辛い体験をし、現在も社会とのかかわり方に悩みながらも、それでも少しずつ前を向いて進んでいると実感できるのは「仲間がいるから」と語っていた点。

 「Origin」で仲間といっしょにボランティア活動やイベントなどを企画し、社会との接点を少しずつひろげながら、それをやり遂げた経験とその積み重ね。さらにみんなで励まし合いながら、社会に出て仕事をすることで成長していると実感できていることがお二人の自信となり、それが今回のチャレンジを支える勇気にもつながっているようでした。

 この日はその背中にあしらわれたロゴも誇らしげで、とても力強く輝いてみえました。「Origin」のメンバーのチャレンジは今後も続きますが、このお二人がこれからも引っ張っていってくれることでしょう。まずは、お疲れさまでした<(_ _)>

▲体験談を語る小菅さん。小菅さんのことを気遣ってずっと年賀状を送ってくれていた小学校時代の恩師のサプライズ登場もあって、思わず涙……。その背中に置かれた仲間の手。

▲今回はひきこもりの方の就職支援に長く携わり、「Origin」の活動も設立時からサポートしてきた「ジョブカフェさくら」の佐藤良子センター長がその取り組みを紹介。ひきこもりから自立するまでには長い支援が必要だと語るセンター長の言葉が印象的でした。また、後半は参加者と語り合う場も設けられ、ひきこもりの子を持つ親御さんの悩みに「Origin」のメンバーが当事者の視点でアドバイスする場面も。

若者セミナー「Origin」(オリジン)

開催日時/毎月第4木曜日 10:00~12:00
会場/ジョブカフェさくら(北上市芳町2-8 北上地区合同庁舎 1階)
お問い合わせ/0197-63-3533
※お申し込みは不要。参加料も無料です。

(了)

11/25(木)、「Origin」運動会を開催!

誰でも参加大歓迎! お気軽にご参加ください。

開催日時/2021年11月25日(木)13:30~15:30
会場/北上地区合同庁舎付属棟  2階 第2会議室(北上市芳町2-8)
対象/誰でも参加OK
参加費/300円
※運動会競技用備品(パン・ハチマキ・風船など)に活用。
服装/動きやすい服装・履物を着用のこと。汗拭きタオル・水分補給用の飲み物は各自で用意。
主催/北上雇用対策協議会、ジョブカフェさくら

2021-11-02|
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