外国人にも選ばれる企業へ。
地域に溶け込む努力がカギに。
去る2月7日(水)、北上市生涯学習センターで、ハローワーク北上と北上雇用対策協議会が主催する「外国人労働者雇用管理セミナー」が開催されました。
参加されたのは、北上市内にある23の企業の担当者のみなさんです。
人口減少、人手不足が叫ばれるなか、現在「外国人技能実習制度」の見直しが進められ、途上国に技術を伝える国際貢献を目的とした「技能実習」から、国内の労働力不足の軽減を重視し、能力に応じて長期的な就労を可能にする「育成就労」へと大きく舵を切ろうとしています。
これにより従来の「技能実習」では原則として認められなかった「転職」が、分野に応じて1~2年で可能に。企業もより一層「働きやすい」「成長できる」環境づくりを進め、外国人からも選ばれる企業になるよう変化が求められています。
今回のセミナーは、そうした大きな変革期にある状況のなかで、岩手県内の外国人労働者の現状と雇用管理について、また適正な労働条件の確保について、さらに北上市で行っている外国人の方と地域の方との交流を図る取り組みについて、専門家を迎えお話をうかがいました。
データで見る岩手県の外国人雇用状況。
人口減少と人手不足の影響もあり、外国人を雇用している企業の数を全国で見ると2008(平成20)年が76,811社だったものが2023(令和5)年には318,775社となり、15年でおよそ4倍に増加。
その傾向は岩手県も同じで外国人を雇用している企業は350社から1,200社に増えており、現在岩手県では7,000人を超える外国人の方が活躍されています。
ちなみに岩手県の外国人雇用状況を分野別にみると、製造業27.8%を筆頭に幅広い分野で外国人の方が活躍されており、外国人の方たちが岩手県の産業を支える貴重な働き手となっていることがわかります。
また、岩手県の特徴として「技能実習制度」を利用した外国人の方の割合が、全国が20.1%に対して47.2%(3,341人)と2倍以上高くなっている点も注目すべきところです。
そうした状況のなかで変革が進む「技能実習制度」。途上国に技術を伝える国際貢献を目的とした「技能実習」から、能力に応じて長期的な就労を可能にする「育成就労」へと変化し、在籍「1~2年」からの転職が可能になると、より賃金の高い、働きやすい、やりがいのある職場へと転職が進む可能性も……。
「転職したい」から「働き続けたい」環境づくりへ。
今回のセミナーでは岩手県の外国人雇用の現状をデータで読み解きながら進みましたが、外国人労働者のうち「技能実習生」がおよそ半数を占める岩手県では、「選ばれる企業」となるため、より一層「働きやすい環境づくり」と「長期的な人材育成」を進め、外国人技能実習生のみなさんが「長く働きたい」と思ってもらえるように企業自身も変化・成長することが大事になってくるというお話は、改めて納得できました。
そして、もうひとつ印象的だったのが、外国人の方たちが「地域環境に溶け込むための努力も重要になる」というお話。
内閣府のデータによると、12年後には3人に1人が65歳となり、人口減少も進むなか、働き手不足はさらに深刻になるそう。そうしたとき、地域環境に溶け込んでいる外国人の方たちが「いる」と「いない」では、企業の活動力に大きな差が出るとともに、企業活動を維持するためにも大切になり、それが企業の長期的な活動力の強化にもつながっていくというお話は、とても説得力がありました。
もちろん「賃金が高い都会への流失」という不安はありますが、都会からの地方移住が話題となるなど近年は「暮らしやすさ、住みやすさ」が地方の魅力になっています。その強みを外国人の方たちにも実感してもらうことは、長く働いてもらうための良いアピールポイントのひとつになりそうです。
北上市に暮らす外国人と地域をつなぐ取り組み。
今回のセミナーでは、北上市で1974年から国際交流に取り組む「北上市国際交流協会」の活動も紹介されました。
北上市内には現在1,100人を超える外国人の方が暮らしているそうですが、同協会では北上市で暮らす外国人の方と地域の方との交流を図るイベントや、外国人の方向けの日本語講座、企業向けの出張日本語講座、外国人の方向けのガイドマップやゴミの出し方などの翻訳など、外国人の方と地域をつなぐさまざまな活動をしています。
そのなかには企業で働く外国人の方たちが「地域環境に溶け込むため」に活用できる取り組みが多くある点も新しい発見でした。
人口減少、少子高齢化が進み、人手不足が課題となる今、外国人の方たちの雇用だけでなく、外国人からも選ばれる企業となるべく、その先を見据えた取り組みが、企業にとっても、地域にとっても今後重要になると実感したセミナーでした。
参加されたみなさま、お疲れさまでした。
(了)
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