美人の湯で、混浴にドキドキ!

地元の不動産屋さんも太鼓判! 「いい温泉ありますよ」

 もうすぐ10月。北上は昼は20℃前後、朝晩は10~15℃まで気温が下がるなど、これからますます秋も深まり、寒さも厳しくなっていくことでしょう。となると、恋しくなるのが温泉のぬくもりでしょうか。

 温泉と言えば、私は7月中旬に東京から北上市に引っ越してきましたが、部屋探しの際にお世話になった不動産屋さんに「北上のおすすめは?」と尋ねたところ、返ってきた答えが「いい温泉ありますよ」。なかでもイチ押しは、美人の湯として知られる「瀬美温泉」とのことでした。

 ただ、その方は女性であり、私はアラフォー男子です。「美人の湯」に入っても意味ないでしょ? と思いましたが、瀬美温泉の公式サイトを見れば、100%源泉かけ流しの天然温泉であり、肌をつるつるにしてくれる天然保湿成分「メタケイ酸」が豊富に含まれているのが特徴だとか。そうなると乾燥肌の私にも良いのでは? と心が動きました。

 さらに、 渓流の瀬音に耳を傾けながら四季折々の自然の景色を堪能できる露天風呂もあって日帰り入浴もできるとあっては、東京の慌ただしさからようやく卒業した私はもう行くしかないでしょ! (/*´∀`)o レッツゴー♪

7月に訪れたときは、瀬美温泉のそばを流れる川の瀬音が涼を運んでくれました。

 JR北上駅から車で西へ30分ほど走ると、山懐に抱かれた瀬美渓谷のそばに瀬美温泉の宿が佇んでいました。車を降りるとジリジリと照りつける7月の日射しにうんざりしますが、渓流のせせらぎの音や心地よい風が涼を運んできて温泉への期待が高まります。

 宿の入り口では、大きな鬼のお面がお出迎え。

(北上の鬼には角がないんだよね~(*´m`)ムフフ)

などと最近知った知識を披露したくなりますが、そこは独り身の40男の哀しさ。知識をひけらかす相手もおらず、その寂しさに気づかぬふりをして精一杯の笑顔をつくります。だって、フロントには若い女性スタッフが笑顔でお出迎えしてくれているのですから。第一印象は大事!٩( ‘ω’ )و ガンバルぞい(って何をだよ!)

「混浴」の文字を思わず2度見!

「日帰り入浴なんですけど……」

「ありがとうございます。こちらでチケットをどうぞ」

 初めての利用でシステムがよくわからない小心者の私の質問に、女性スタッフはフロント横にある券売機を指さしながら優しく教えてくれました。

(ふむふむ)

 どうやら、入浴料は大人600円。タオルやバスタオルのレンタルもあって、旅の途中で手ぶらで寄っても温泉が楽しめるようになっているよう。

(なるほど!)

 さっそくチケットを購入した私ですが、ふと周りを見渡すと平日の午後の昼下がりとあって館内はひっそりとしています。きっとチェックインチェックアウトの間の時間であり、連泊の宿泊客も昼間は観光に出かけているからでしょう。どこかのんびりとした雰囲気にやすらぎを覚え、平日に休みだったことにも感謝しながら、私はタオルを持って意気揚々とお風呂を目指しました。

(やっぱり最初は美人の湯でしょ!)

 足取りも軽く廊下を歩いていた私は、楽しみにしていた「美人の湯」の入り口にある「混浴」という文字を目にして思わず2度見! こ、こ、こん、こんよく、混浴といえば、山奥の秘境と言われるような場所にある昔ながらの温泉宿でそのような風習(?)が残っているところもある、というのが私の勝手なイメージです。

 片や瀬美温泉は緑豊かな山懐に抱かれた温泉宿とはいえ、JR北上駅から車で30分弱の近さにあり、山奥の秘境というほどのところではありません。私は「混浴」という言葉に戸惑いながら、スマホで慌てて瀬美温泉の公式サイトにアクセスし、今一度、温泉の説明と日帰り入浴の仕組みを調べてみました。

◇瀬美温泉とは?……100%源泉かけ流しの天然温泉で、3種類の泉質の温泉が楽しめる。

  • 温浴・ぬるま湯で夢見心地の「夢の湯」(男女別々の内湯がある)
  • 瀬美温泉で最もつるつるとした肌触りの湯が楽しめる「長寿の湯」(男女別々の内湯と露天風呂がある)
  • 天然の保湿成分「メタケイ酸」を多く含んだ「美人の湯」(内湯は男女別々だが露天風呂は混浴である)

※「美人の湯」の混浴露天風呂は16:00~18:00は女性専用となる。

◇日帰り温泉とは?……「美人の湯」と「長寿の湯」の2種類の温泉が楽しめる。

(美人の湯だけとはいえ、本当に混浴だった……f^_^; )

女性スタッフに向けた感謝の笑顔が波乱の幕開け!

「美人の湯」の露天風呂が混浴だと知って、私の額から嫌な汗が流れてきました。さきほどフロントで出会った女性スタッフの笑顔を思い出したからです。私は女性スタッフからタオルを受け取ると、「美人の湯」の場所を聞いて笑顔でお礼を返し、意気揚々とフロントをあとにしたのです。

その私の後ろ姿を見ながら、

(このおじさん、何ニヤニヤしてんの? 混浴目当てだったりして。キモイ)

などと女性スタッフに思われていたらどうしよう! と妄想がどんどん膨らんでいきました。

 これが、カップルや夫婦、家族連れとかならいいのですが、私はひとりで訪れた哀愁漂う40男。「なんか笑顔を振りまいて怪しい」とか思われてはいないか……と考えている私のそばを男性スタッフが「どうぞ、ごゆっくり」と笑顔で会釈して通りすぎていきます。そこでまた不安が募る私。

(あのヒトも俺が混浴目当ての客だと思っていないか?)

などと考えてしまい、気がつけば私は疑心暗鬼の深い闇に飲み込まれていました。

 私は声を大にして言いたい!

美人の湯の露天風呂が混浴だとは知らなかったのです!

ただ、不動産屋さんの女性にすすめられ、何も知らずに来ただけです!

純粋に乾燥肌に良いのでは、という好奇心だけで来ました!

しかし、フロントに取って返して女性スタッフに今さらそんなことを言っても、余計に気持ち悪がられるだけです。ここは混浴など知らなかったふりを押し通して、純粋に温泉を楽しむ気のいいおじさんを演じるしかない……。

 私はそう覚悟すると、一眼レフ技術を搭載し暗いところでもキレイに撮れることが売りのスマホをバッグの奥底にしまい、さらにそれをコインロッカーの奥深くに押し込むと、手ぶらで温泉を満喫しにきた気のいいおじさんを演じながら、「美人の湯」の男性用脱衣所に足を踏み入れました。

初めての混浴風呂にヘトヘト。

有難いことに、「美人の湯」の男性用脱衣所にも内湯にもヒトの姿はありませんでした。さらに、全面ガラス張りの向こうには、豊かな自然と、吸い込まれそうな青空が美しい石造りの露天風呂が広がっているのですが、そこにも誰もいません。お陰で混浴の露天風呂の様子を外からじっくり眺めることができました。

 奥行きのある露天風呂は、敷地の半ばまで男女を隔てる目隠し用の仕切りがあり、仕切りがなくなった奥が女性用の露天風呂とつながっているようです。混浴は混浴でも半混浴という感じでしょうか。大パノラマが自慢とHPに書いてありましたが、仕切りのない奥までゆけば、さらに大パノラマを楽しめるのかもしれません(間違っても女性を見たいわけじゃありませんよ!)。が、小心者の私にそこまで出ていく勇気はありません。しかし……、大パノラマの絶景がどういうものか、気にはなります。

 改めて周りを見渡せば、男性用の内湯には私しかいません。露天風呂にも誰もいません……。露天風呂に通じるガラス戸を開けて耳を澄ましますが、仕切りの向こうも静かで女性の声どころか、ヒトの気配も感じられません……。

(せっかくだから、話のネタに混浴風呂に入ってみるか……。誰もいないし)

 好奇心に駆られて、私は露天風呂にいそいそと身を沈めました。しかし、今は誰もいなくても、このあとに誰かが入ってくる可能性はあります。最初は仕切りがなくなる奥の方にも近づいてみようと思っていたのですが、やっぱりいつでもすぐ撤収できるようにガラス戸の一番近い場所から動かないことにしました。

 温泉に浸かりくつろぐ間もなく、私は「ガタ」という物音に素早く反応し、露天風呂から飛び出すと脱衣所に取って返し、素早く着替え「美人の湯」をあとにしました。結局、混浴の露天風呂に浸かっていたのは30秒に満たないかもしれません。それでも私は初めての混浴温泉気分を堪能することに成功したのです。私は大きな達成感に包まれながら(少し疲れましたが……)、次なるお風呂「長寿の湯」を目指しました。

温泉はやっぱり、のんびりゆったりがいいね!

「長寿の湯」は瀬美温泉で最もつるつるとした肌触りの湯が楽しめる温泉です。内湯には先客のご老人がひとりいらっしゃいましたが、ここは混浴ではありません。従って、ひと目を気にしたり、こそこそしたりする必要もありません。私は湯舟に肩まで浸かると、ようやくさっきまでの緊張感から解放され、ゆったりくつろぐことができました。 

 ふと湯舟に浸かった腕を触るとつるつるとしたシルクのような肌触り……、気分もリラックスして「極楽」とは、まさにこの瞬間のことを言うのでしょうo(^-^)o やっぱり温泉は手足を伸ばして、のんびりゆったりくつろぐのが一番ですね!

 日帰り入浴を終えて宿を出るとき、私は再び緊張に包まれました。料金は先払いですから、入浴後はさっさと帰るだけなのですが、宿の外に出るためには女性スタッフのいるフロントの前を通らねばなりません。もし、あの女性スタッフと出会ったら、

「あっ、混浴目当てのおじさんだ。キモイ」

などと思われるのではないかと考えると、たかだか宿を出るだけなのに緊張感が再び高まってきます。

(せっかく長寿の湯で極楽気分を味わったばかりなのに……( ノД`)シクシク)

足音を忍ばせ、フロントの様子をこっそりのぞくと、どうやら女性スタッフは奥の部屋で別の仕事をしているのか、その姿は見当たりません。

(今だ!)

私は急いでフロントの前を通ると玄関で靴を履き、急いで外へ飛び出しました!

\(^o^)/

 外に出る瞬間、チラッとフロントの様子を見ましたが、女性スタッフの姿はありません。そこで私はようやくホッとすることができました。車に向かって歩き出すと、渓流の瀬音とともに心地よい風が吹き抜けて、温泉で火照った体を涼めてくれます。今日いちばんのご褒美は、温泉でくつろいだあとに感じるこの風かもしれないと思いながら、私は瀬美温泉を後にしたのでした。

※今回、写真が少ないのは、スマホを奥底にしまったバッグをコインロッカーの奥深くに押し込めていたためです。宿の様子やお風呂の様子を知りたい方は、下記の「瀬美温泉」をポチッとしてみてください。

※「美人の湯」の混浴露天風呂は冬季(11月~4月)に閉鎖になる期間があります。詳細は下記の「瀬美温泉」をクリックし、公式サイトにてご確認ください。

◇「瀬美温泉」については、仕事人図鑑第25弾でも紹介。興味のある方はこちら!

(了)

美人の湯 瀬美温泉  

岩手県北上市和賀町岩崎新田1-128-2

Tel/0197-73-7294

2018-09-27|
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