赤ちゃんも大人も一緒に、楽しくご飯を食べられるカフェに。

CAFE WILLOWS(カフェ ウィローズ)オーナー
石戸谷(いしとや)くるみ

 

赤ちゃんを授かって気づいたママの孤独。

 結婚・出産を経て産後クライシスになった経験が、石戸谷くるみさんの大学生の頃からの夢だったキッズルームのあるカフェの実現を、より理想的なものに近づけてくれました。

 カフェの名前は「CAFE  WILLOWS」(カフェ ウィローズ)。2018年6月1日に北上市大通り三丁目にオープンしたそのお店は、妊婦さんや小さなお子さんのいるママさんを中心とした女性たちに人気を集めています。

 人気の理由は、木目調のインテリアに心落ち着くおしゃれな店内の雰囲気。北上で採れた新鮮な野菜をたっぷり使ったイタリアンテイストなランチのおいしさ。イタリア産の豆を使い、本場イタリアのバリスタも認めるエスプレッソ・マシーン「チンバリ」で淹れるエスプレッソの本格的な味わい……などなどいろいろありますが、一番の理由は、妊婦さんや子連れのママさん、そしてママさんと一緒に訪れた赤ちゃんやお子さんへのやさしい心遣いでしょう。

「私がそうしてもらったらうれしいと思うことをしているだけなんです」

 そう語るくるみさんは、1歳半の子どもを持つママさんでもあります。くるみさんは赤ちゃんと一緒に外でご飯を食べたくても、小あがりのある飲食店がなかなか見つからなくて困った経験がありました。

 さらに、赤ちゃんが生まれ産後クライシスになったときは、イライラして夜も眠れず、愛するご主人でさえ触れてほしくないと思うほど辛い経験もしています。

 そんなとき、赤ちゃんと一緒に気軽に訪れて気分転換ができたり、他のママさんたちとゆっくりおしゃべりできる場があれば、という想いが「CAFE  WILLOWS」の原点です。

「CAFE  WILLOWS」の店内。奥の白い壁の向こうにキッズルームがあります。

 

 くるみさんの一番のこだわりは、小あがりの広々としたキッズルーム。この空間は赤ちゃんや小さなお子さんのいるママさんが子連れでランチを楽しめ、食事のあとにはお子さんを自由に遊ばせながらママ友とおしゃべりしたり、のんびり過ごしたりできるようにと、くるみさんが特にこだわってつくりました。

    

広々としたキッズルームは、予約がなければ時間無制限で利用できます。

 

 当初はテーブル席をもっと増やして、キッズルームも「小あがりではなく、もっと小さなスペースで」とくるみさんは考えていました。しかし、子どもを出産して産後クライシスになった経験が、テーブル席を減らしてでも今のカタチに「しなきゃいけない」と思うようになりました。

 現在、キッズルームは予約制ではないにもかかわらず、予約してでも利用したいというママさんたちの予約で埋まっています。

 

離乳食のお子さんも大人と一緒においしいものを。

 「私がそうしてもらったらうれしい」というくるみさんの気遣いは、他にも店内の隅々にいきとどいています。キッズルームの一角には授乳室、トイレにはオムツ替え台、お昼寝時には簡易ベッドにもなるハイローチェアやミルク用ウォーターサーバーも完備。

 さらに、メニューではアレルギーへの対応はもちろん、妊娠中のママさんのためにノンカフェインのドリンクを用意。離乳食のお子さんがいるママさんには注文をいただいた際に、ご飯のやわらかさ(普通・おかゆ・とろとろ)、野菜の大きさ(噛める大きさ・細かめ・すりおろし)、食べられる野菜・食べさせたことのない野菜などを細かく教えてもらい、一人ひとりのお子さんに合った離乳食を提供するように工夫しています。

「私にも1歳半の子どもがいるのでよくわかるんです。離乳食は月齢によってどんどん食べられるものが変わっていくし、個人差もあるので、お子さん一人ひとりでつくり方も違ってくるんですよ。ですから、細かく離乳食の内容を教えてもらうことでママさんも安心して外食を楽しめるし、離乳食のお子さんも初期から大人と一緒においしいご飯が食べられたらうれしいだろうなって思ったんです」(くるみさん)

 ママさんだけでなく、お子さんの「うれしい」にまで気を配るくるみさんのやさしい眼差しが、多くの女性たちに支持されている一番の理由なのかもしれません。

くるみさんこだわりの離乳食は、ご飯のやわらかさ・具材の大きさなど一人ひとりに合わせてつくっています。

キッズルームの一角に設けられた授乳室。動物柄の壁紙はくるみさんの大のお気に入り。

 

お父さんが亡くなり、「(有)柳印舗」存亡の危機。

 そんなくるみさんですが、実は大学3年生の頃はテレビ番組の制作会社に就職しようと考えていました。しかし、北上市で創業200年を超えるはんこ屋さん「(有)柳印舗」を営んでいたお父さんが51歳という若さで亡くなり、転機が訪れます。

 家業の今後について家族で話し合いが行われた際に、お母さん一人では家業を続けられないとわかったのです。そのとき当時1歳の子どものママだったお姉さんが言った「キッズルームのあるカフェをやろう!」というひと言で、くるみさんの心が決まりました。

 栃木県宇都宮市にある大学に通っていたくるみさんは就職活動を一切やめ、カフェの起業に向けて準備をはじめます。

 まず行なったのが、カフェめぐり。大学生時代はもちろん、大学卒業後も就職せず、バイトをしながら貯めたお金で宇都宮市内をはじめ、県外や東京にも足を運び、いろいろなカフェを訪ね歩きます。ときには1日に何軒もハシゴしながら100軒以上の店をめぐり、アイディアを膨らませていきました。

 次にチャレンジしたのが、バーの店長の仕事。小さなお店でしたが、ドリンクや料理づくりはもちろん、営業の仕事やお金の管理も全部ひとりでやりました。

 さらに料理の勉強をするため、イタリアンレストランでも武者修行。野菜の洗い方・切り方からはじまり、料理づくりを学び、経験を積むとパスタやデザートに加え、メニュー開発も任されるようになりました。

「バーやイタリアンレストランでの経験はどちらも1年ほどでしたが、カフェで起業したいので基礎から教えてほしいと最初にお願いをしていたので、たくさんのことを教えていただきました。今のお店があるのも、そのときの経験があるからです」(くるみさん)

北上産の野菜でお腹をいっぱいにしたい方に人気のウィローズランチA。たっぷりサラダ、前菜3種、フリッタータ、スープ、ドリンクがついて900円。プラス100円で食パンまたはご飯が付くスタイル。くるみさんは糖質オフのランチにこだわっているため、食パンやご飯は別メニューとなっています。

 

辛い修業時代を支えてくれたもの。

 バーの店長の仕事は23歳のとき。「その若さでお店の経営なんてできるわけがない」「女じゃ無理」など理不尽なことも周りからたくさん言われました。イタリアンレストランでは人間関係のことで深く悩んだりもしました。しかし、カフェで起業するという夢は変わりませんでした。

 くるみさんは3年前に北上市に戻ってきました。その後、起業の準備を続けながら、結婚・出産を経て、現在の「CAFE  WILLOWS」があります。

「飲食店でバイトをはじめたのが高校3年生のときです。それから今までずっとこの仕事をしていますが、接客の仕事が好きなんだなって最近改めて思うんです。話すことが好きで、お客さまを楽しませることが好きなんですよ。バーで働いているときも、ひとりでいらっしゃる方がたくさんいて、その方たちといろんなお話をして元気になって帰ってもらったとき、この仕事をやっていてよかったなって思うんです。しかも、そのお客さまがまた店に来てくださると、本当にうれしくなるんですよね」(くるみさん)

 テレビ番組の制作会社に就職を考えていたくるみさんが、お姉さんのひと言でキッズルームのあるカフェの起業を目指して突き進んだ理由。それはきっと、身近すぎて気づかなかった「接客の楽しさ」を仕事にするという選択を、お姉さんのひと言が気づかせてくれたせいなのかもしれません。

野菜や哺乳瓶など、くるみさんが大切にしているものが描かれたお店のロゴ。店名「WILLOWS」はくるみさんの旧姓「柳」の英訳。丸いカタチは200年以上続いたはんこ屋さん「(有)柳印舗」に敬意を込めて。

 

キッズルームから広がるママさんの輪。

 「CAFE  WILLOWS」では、広いキッズルームを活用して「えほんのじかん」「たのしむ子育て おしゃべり会」といったイベントも開催しています。

 しかし、これらはくるみさんが考案してはじめたイベントではありません。お店で働くママさん、お客さんとして訪れるママさんの「やりたい!」を叶える場所として、くるみさんがキッズルームという空間を提供するカタチになっています。

「マタニティヨガやベビーヨガをやりたいというママさんもいらっしゃいますし、自分でつくったベビー服を置いてほしいというママさんもいらっしゃいます。そのベビー服はレジ横に置いて販売していますが、ママさんたちのやりたいことはできる限り応援したい。ママさんたちのやりたいことを叶える場所として、この空間をどんどん利用していただきたいと思っています」(くるみさん)

 くるみさんの想いが通じてか、「えほんのじかん」は好評のため、早くも4回目が開催決定。「たのしむ子育て おしゃべり会」も初めてのイベントにもかかわらず、赤ちゃんを連れたママさんが8組も参加するなど盛況でした。

 「CAFE  WILLOWS」はまだオープンして4か月、生まれたばかりの赤ちゃんのようなお店、といったらくるみさんに怒られるでしょうか。しかし、店内は赤ちゃんや子どもたちの元気な姿と、ママさんたちのイキイキとした話し声が響いていて、このカフェがこれからどのように育っていくのか楽しみになります。赤ちゃんがすくすく育っていくように、「CAFE  WILLOWS」もママさんのたくさんの「やりたい!」が広がって、北上を元気にする新しい何かが生まれてくる予感がして、なんだかワクワクしてきます。

 みなさんも、まずはこだわりの北上野菜をたっぷり使用したランチを味わいに訪れてみてはいかが?  くるみさんをはじめ「CAFE  WILLOWS」のスタッフが笑顔で迎えてくれることでしょう。  (了)

左上のベビー服が、お店に訪れたママさんの「ハンドメイドのベビー服を置いてほしい」という願いにくるみさんが応えたもの。

店内に入ると、お店で使用しているこだわりの北上野菜をつくる農家さんの名前が記されたボードが出迎えてくれます。

 

CAFE WILLOWSの求人!

「CAFE  WILLOWS」は子育て中のママさんを積極的に採用し、くるみさんを含め4人のメンバーでスタートしました。しかし、いざ営業してみると新たな不安が……。

お店で働くママさんの子どもたちが同じ日に熱でも出したりしたらどうしよう?  という不安です。今までは奇跡的に同じ日に子どもたちが病気になったりすることもなかったため、営業を続けてこられました。

しかし、もし冬を迎え同じ日に風邪でもひいてしまったら、お店を休業せざるを得ない事態も十分に考えられます。せっかく多くのママさんにご利用いただいているお店ですから、定休日以外は休みたくはありません。

そこで「CAFE  WILLOWS」では、大学生や専門学校生、フリーターの方などお店の考えに共感するアルバイトを募集中です!  興味のある方は下記までお問い合わせください。

 

CAFE WILLOWS(カフェ ウィローズ)

岩手県北上市大通り3-1-17

Tel/0197-63-2662

Lunch time/11:00~14:00
Cafe time/14:00~18:00
ラストオーダー/17:00

定休日/月曜日、第2・4日曜日

駐車場/10台

2018-09-02|
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