平野はり灸整骨院 院長
平野 裕和(ひらの ひろかず)
このままでいいのか? 東京で感じた不安。
同じアパートなのに、隣にどんなヒトが住んでいるのかわからない……。人間関係の希薄な東京に暮らしていて生まれるやるせない気持ちは、大学4年になって、入社前研修で1年間働いたIT関連企業の仕事をするうち、さらに強くなりました。大学卒業後も今の会社に入社して東京でこのまま暮らしていくのか……、平野裕和さんは悩んでいました。
そんなとき、よみがえってくるのが高校時代の記憶。平野さんは北上市内にある高校のラグビー部に所属し、フォワードとして活躍していましたが、ラガーマンとしては小柄だったためケガも多く、地元の整骨院や整形外科によく通っていました。
ラグビーに夢中だった平野さんにとって、ケガで練習ができず、仲間がボールを追う姿を見ているだけの日々は辛いこと。ケガをするたび、この痛みはいつとれるのか、治療にどれぐらいかかるのかという不安と、早く練習に復帰したいという焦りでいっぱいでした。
しかし、今にして思えばケガに悩まされながらも高校の3年間、好きなラグビーを続けてこられたのは、お世話になった地元の整骨院や整形外科があったからだと気づきます。いつしか平野さんは「自分も北上に戻って、地域のヒトたちに寄り添い、その痛みや不調を治す整骨院の仕事もいいな」と思うようになりました。
決定的だったのが、「はり灸」との出会い。平野さんには、東京の大学に進学して本格的なラグビーから離れても、どうしても消えない“痛み”がありました。その“痛み”を取り除いてくれたのが、東京で訪れた整骨院での鍼治療。平野さんが目指す道が、このとき決まりました。
平野さんが開業した整骨院。入り口には足の悪い方やベビーカーでも安心のスロープが設けられています。
清潔で明るい雰囲気の施術室。奥には最新のウォーターベッド・マッサージ機も完備。
理想の施術スタイルへ、一歩一歩の日々。
平野さんは「はり灸」の国家資格を取得するため、昼間は月曜から土曜まで東京都内にある「はり灸」の専門学校に通い、授業が終わったあとは整骨院でバイトする生活を3年間続けます。
「自分が選んだ道とはいえ、休みもほとんどなくて本当にしんどかったです」
当時を振り返って苦笑いを浮かべる平野さんですが、「はり灸」を学ぶ3年間は自分が目指す理想の施術スタイルに一歩一歩近づいていく充実した日々でもありました。
「はり灸」の施術を行なうには国家資格が必要とあって、学校で学ぶことは多様でどれも専門的。東洋医学の知識や技術はもちろん、解剖学、病理学、臨床医学などの現代医学に加え、病院でも説明できるように理学的な検査方法まで幅広く学びます。
さらに卒業試験では、実際に腰が痛い患者さんの状態を見て、その痛みはヘルニアによるものか、腰の病気ではないかを判断し、治療に最適な方法を選びます。そして、患者さんには痛みの原因はどこか、それによって体がどういう状態になっているか、その痛みを取り除くためにどんな治療が適切か、治療にどれぐらいの期間が必要か、など具体的にわかりやすく説明することが求められます。
「僕が『はり灸』の国家資格を取ろうと思ったのも、痛みや不調の原因と治療の内容をきちんと説明できる整骨院を北上で開業したいと思ったからです。
例えば、痛い場所が背中でも、それは結果でしかなくて、痛みの原因は内臓が悪くてその症状が背中に出ている場合もあれば、姿勢が悪くて筋肉が固くなって痛みが出る場合もあります。
そうした原因を見極めて、あなたはここが悪いのでここを治療すると、これぐらいの期間でこう良くなります、ときちんと説明できれば、何が原因かもわからず、いつ治るかと不安でいっぱいの患者さんも、安心して治療に通えると思うんです。それができる整骨院が僕の理想です」(平野さん)
ラグビーのケガで苦労した経験が、患者さん一人ひとりの痛みや不調に寄り添い、患者さんの不安を取り除きながら安心して治療に専念できるようにと気を配る平野さんの今の施術スタイルをカタチづくっています。
この日は四十肩に悩む男性が患者さんでした。
患部に鍼を打つ平野さん。髪の毛ほどの細さの鍼を7~8本打ちますが、痛みはほとんどありません。
介護の最前線へ。往診もできる整骨院へ。
学校と整骨院でのバイトの両立で苦労しながらも「はり灸」の国家資格を3年で見事取得した平野さんは、東京にある整骨院に勤めはじめますが、そこを選んだ理由は「鍼を打つ」経験をたくさんしたかったから。
「マチナカにある整骨院で鍼を打つ患者さんはそう多くはいません。でも、その整骨院は8~9割が鍼を打つ患者さんでした。
鍼は、体に痛みのある方、体の調子が悪い方なら誰でも施術を受けられます。肩こり、腰痛、神経痛、四十肩・五十肩といった関節炎、頭痛、慢性的な冷え性、不眠、体がすっきりしない、重い、生理痛、さらに妊婦さんの逆子の矯正にも鍼が使われたりします。
もちろん、技術的なことは学校で学んではいますが、現場でもいろんな痛みや不調の治療を数多く経験したくて、その整骨院を選びました」(平野さん)
しかし、専門学校を卒業したばかりの鍼灸師がすぐに仕事を任せられるほど、実際の現場は甘くはありません。特にその整骨院の鍼灸師はベテラン揃いで、患者さんもベテランを信頼しており、平野さんが新人だと知ると敬遠され、鍼を打ちたくても打てない辛い日々が続きました。
そんなある日、平野さんの道しるべとなる出会いが訪れます。今まで通院していた年配の患者さんの症状が悪化し、ベッドから動けないため往診することになったのです。しかし、その日は特に忙しくてベテランの手もいっぱい。そこで平野さんが担当することになったのですが、平野さんの鍼治療を受けた患者さんは、整骨院に行かなくても状態がラクになったことに感激し、「こうして来ていただいて、本当にありがとうございました」と言ってくれました。
この経験が、いずれは往診にも対応できる地元に根ざした整骨院にしようと平野さんが決意するきっかけとなります。
「東京の整骨院で働いていたときは何度も年配の方のご自宅に往診に行きました。北上市でも高齢化が進んでいますが、介護されている方はもちろん、介護しているご家族やスタッフさんも無理が続いたりして体に疲れが溜まっていると思うんです。そうしたご家庭に往診して、介護にたずさわるみなさんの体のケアから心のケアまで担える整骨院にしたいと思っています」(平野さん)
待合室にはキッズスペースがあり、子連れでも安心して利用できるように配慮されています。
落ち着いた雰囲気の個室も用意され、幅広い治療に対応しています。
地域の幅広いニーズに応えるため、柔道整復師の国家資格にも挑戦。
専門学校で3年間学び、鍼治療がメインの整骨院で4年間経験を積んだ平野さんは、東京を離れる決意をします。そして、「柔道整復師」の国家資格を取得するため、盛岡市にある整骨院で昼間は鍼灸師として働きながら夜間の柔道整復師の専門学校に3年間通う道を選択。と同時に、北上で開業する準備もスタート。その後、見事3年で柔道整復師の国家資格を取得し、2017年12月、遂に北上市中野町三丁目に「平野はり灸整骨院」を開業するに至ります。
平野さんが「はり灸」に加えて柔道整復師の国家資格も取得したのは、自分の施術領域を広げ、打撲・ねんざ・骨折・脱臼などのケガにも対応できるようにするためでした。さらに、これらのケガは「はり灸」と併用すると治りが良くなるという利点にも平野さんは注目していました。
「『はり灸』は西日本では盛んですが、東北ではまだまだ認知度が低いんです。ですから、患者さんのニーズに幅広く対応しながら、柔道整復師の施術と『はり灸』を併用することで『はり灸』のことをたくさんの方に知ってもらおうと思いました。そうすることで『鍼って効果があるんだ』『痛くないし、怖くもないんだ』と実感してもらえたらいいなと思ったんです」(平野さん)
平野さんのこうした取り組みにより、「平野はり灸整骨院」に訪れる患者さんは、柔道整復師の施術と「はり灸」を併用する方が半数にまで増加。しかも、その効果を実感した患者さん自身が2回目、3回目も「はり灸」を利用するようになっています。
「はり灸」の治療で使われる道具。左上が「もぐさ」でかかとなど皮が厚いところには、このまま使用する場合も。左下は台座がついた「もぐさ」で皮の薄い部位に使用。右の5本が「鍼」で、鍼の細さは髪の毛ほどで筋肉と筋肉の間に打つため、痛みをほとんど感じません。
ご家族一人ひとりを見守り続ける、地域に根ざした整骨院へ。
平野さんは地域のニーズにさらに応えるため、この夏に新しい治療機器を導入。アスリートの疲れた筋肉のケアや、ケガをした患部の治療も行える機器としてソチ五輪やリオ五輪でも正式採用された「高周(ラジオ)波温熱機器 フィジオ ラジオスティム」など3台のケアマシーンが、それです。
「10年前は考えられなかったことですが、最近は小学生の子も多く治療に訪れます。スポーツ少年団やクラブチームの活動が活発になって、まだ体ができていないうちから大きな負荷がかかる運動やハードな練習を行っているからだと思います。
僕がこの3台を導入したのは、従来までの機器は成長期の子どもには使えなかったから。でも、この3台は子どもの体に負担をかけず、短時間で質の高いケアができます。それにバッグに入れて持ち運べるので、練習グラウンドや試合会場に持っていって子どもたちのケアをしてあげることもできるんです」(平野さん)
さらに、この3台は熱を発生する機器のため冷え性にも効果的で、その他に四十肩・五十肩の凝り固まった筋肉をほぐしたり、年配の方の血行不良を改善したりできるなど幅広く使えるメリットがあり、「往診にも持っていける」と平野さんは声を弾ませます。
車イスやベビーカーでも安心の入り口のスロープ、段差がなくバリアフリーな院内、待合室にはキッズスペースも設けるなど、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い世代を受け入れられる環境。東京都内の整骨院で培った幅広い「はり灸」の施術経験。さらに、柔道整復師や最先端の治療機器を取り入れ、往診への対応も見据えながら、地域の幅広いニーズに応えていこうとする姿勢。それはまるで、子どもからお年寄りまで、地域の家族をまるごと受け入れようとしているようにもみえます。
「僕は北上市で生まれ育った人間です。東京で暮らしてこの街の良さにも改めて気づいて、この街でずっとがんばっていこうと決めています。そういう僕だからできる、地域の家族一人ひとりをずっと見守り続けるような整骨院にしたい。どこか痛みがあったり不調があったりしたら、あそこに相談しようと思ってもらえるような、そういう身近な、家族みんなで気軽に利用していただける地域に根ざした整骨院にしていきたいんです」(平野さん)
高校生の頃、地元の整骨院や整形外科に支えられてラグビーが続けられたように、次は自分が地域の子どもたち、家族、年配の方の痛みや不調の不安に寄り添おうと覚悟を決めている平野さん。その眼差しは、10年先、20年先、30年先の北上の未来を見つめていました。 (了)
最先端のケアマシーン「フィジオ ラジオスティム」を使い、四十肩の凝り固まった筋肉をほぐす平野さん。
施術中の真剣な表情。
◇平野院長は、FMラジオ番組「夢を語る大人たち」にも出演! 興味のある方はこちら!
平野はり灸整骨院の求人!〈来年度〉
「平野はり灸整骨院」では将来的な往診への対応も見据え、ともに働く鍼灸師の仲間を来年度に募集する予定です。 詳細が決まりましたら、このサイトでもお知らせします。興味のある方、見学したい方は下記までお問い合わせください。
(了)
平野はり灸整骨院
岩手県北上市中野町3-2-12
Tel/0197-62-8118
診療時間/9:00~13:00 15:00~19:30(土曜日の最終受付は18:00)
※水・土曜日の午後は予約優先となります。
休院日/日曜日・祝日
駐車場/10台
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