“ひと”が品質をつくる。 手づくりの技術にさらに磨きをかけて、 FRPの未来を切り拓く仕事人たち。

ハイプラ化成株式会社

代表取締役 ……………… 小山昭彦(おやま あきひこ)

成形型 ……………………三浦正明(みうら まさあき)

成形(積層・脱泡)…… 高橋文子(たかはし ふみこ)

仕上げ・検査・出荷 ……臺 雄也(だい ゆうや)

クルマも手づくりへ。美しいものづくりを支える仕事人たち。

 改めて、もう一度トップの写真をご覧ください。

 たくさんの仕事人に囲まれて佇む1台のクルマ。優雅な曲線美、遊び心と上品さを兼ね備えたクラシカルなフォルム……。

 そのクルマこそ、斬新なデザインで大きな話題を集め、2014年に惜しまれながら生産を終了したスーパーカー「オロチ」を生んだ自動車メーカー「光岡自動車」が手掛けるクルマ「ビュート」です。

 そのコンセプトは、大量生産ではなし得ない「手づくりのクルマ」であること。すべての工程を手作業で行うため、1台が完成するまでおよそ40日を費やし、もはや単なる工業製品ではなく「作品」とも呼べる1台に……。

 この美しい1台の内外装のパーツを手づくりで支えているのが北上市村崎野にある「ハイプラ化成株式会社」。

 同社は、今年で創業40周年を迎えるFRP(繊維強化プラスチック)の老舗。自動車用内外装パネル、トラック用エアデフレクター(運転席の屋根の上にある風防)などを中心に、農機具などの機械カバー、キャンピングカーの居住部分、遊具、タンク、仮設トイレなどを製造・販売。

 さらに近年は、同社の代表を務める小山昭彦さんを中心に、新素材の研究開発にも積極的に携わっています。

 そんな「ハイプラ化成」のものづくりを支えているのが、FRPに魅せられ、手づくりにこだわる仕事人たち……。

大反響を呼んだ「光岡自動車」のスーパーカー「オロチ」のボディも、「ハイプラ化成」の仕事人たちが手がけたもの。
今ブームのキャンピングカーのシェル(居住部分)も。
果樹園などで農薬を散布する薬剤噴霧器「スピードスプレーヤ」のボディも。
大きなすべり台など、かわいらしい遊具も「ハイプラ化成」の仕事人たちが手づくりでカタチにしています。

カタチのないものをカタチにしていく。それがFRPの魅力。

 「ハイプラ化成」の仕事人たちにご登場いただく前に、まずは「FRP」についてご説明しましょう。

 FRPとは、Fiber Reinforced Plasticsの頭文字を取った略語で、日本語に訳すと「繊維強化プラスチック」となります。

 つまり、強度と耐熱性にすぐれたガラス繊維やカーボン繊維などの「繊維」と「樹脂」を組み合わせることで、軽量な「プラスチック」の強度と耐熱性などを高め、材料としてバージョンアップさせたものがFRP(=複合材料とも呼ばれます)です。

 その特性から、自動車の内外装パーツをはじめ、小型船舶のボディ、ユニットバスや浄化槽などの住宅設備機器、鉄道車両の内外装、航空機、さらには宇宙産業などなど幅広い分野で利用されていますが、日本でその事業がスタートしたのはおよそ60年前。

 今年創業40周年を迎える「ハイプラ化成」が“老舗”と呼ばれる所以は、そんな日本のFRPの歴史の2/3を支え、国内でもトップレベルの技術を有しているからでもありました。

 「プラスチック」というと、機械で大量生産されているイメージですが、FRPはほとんどが手作業。「ハイプラ化成」でのそのものづくりは、成形用の型(かた)の製作からはじまります。

 それを担当しているのが、FRPの仕事に45年以上も携わる三浦正明さん。

「FRPの工場で親戚が働いていて、その縁で私もその工場でアルバイトすることになったのがきっかけでこの業界に入りました。高校生のときです。

 その後、文系の大学に進んだんですが、バイト先はやっぱりFRPの工場。バイト代で大学の授業料を払えるぐらい稼いでいました(笑) それぐらい、とにかく仕事が面白かった。大学卒業後に入社したのもFRPの会社。以来、今日までずっとFRP一筋です」

 そう言って朗らかに笑う三浦さんは、さらに言葉を続けます。

「FRPをつくるときに使用する材料(繊維や樹脂)は、ひとつひとつ特性が異なります。それらを組み合わせて化学反応を起こさせながら、カタチのないものをカタチにしていく……。そこがFRPの魅力ですね。

 しかも、ひとつひとつの材料についても、勉強すればするほど、どんどん難しくなっていくし、未だにわからない部分もあって、それだけ奥が深いから今でも日々勉強です。でも、だから面白い(笑)」

 FRPの可能性に魅せられ、この仕事に45年以上も携わる仕事人は、FRPの魅力をそう語ってくれました。

成形用の型をつくる三浦さん。成形型もFRPで製作。材料の特性を見極め、その特性が最も生かせる状態で使えるように、
温度や湿度にも気を配りながら「繊維」と「樹脂」を組み合わせ、型をつくるそう。
製作には小さいもので1日、大きなものでは20日以上もかかるものも。

ほぼ手づくり! FRP製品ができるまで

成形型

「ハイプラ化成」では、成形用の型から手づくり。写真は、トラックの運転席の屋根に設置するエアデフレクター(風防)の型。こちらの型に樹脂で繊維を張り付け、製品をカタチにしていきます。

ゲルコート

成形型の表面にワックス(離型剤)を塗ります。その後、FRP用の塗料(ゲルコート)を成形型に吹き付けます。

成形

ゲルコート処理を施した成形型にガラス繊維などの「繊維」をセットし、樹脂で型に張り付けます。この作業を繰り返し、繊維と樹脂を所定の厚さまで積層させます。

脱型(だっけい)・加工

積層させた繊維と樹脂が硬化したら、製品を成形型から取り外し、図面通りにカット・穴あけなどの加工を行います。

アセンブリ

部品などを取り付け、製品を最終的なカタチにしていきます。

仕上げ・検査

最後に磨き工程・品質検査を経て完成。

出荷

お客さまのもとへ出荷されます。

手づくりの面白さ。男性だけじゃない。女性も輝ける仕事に。

「この会社はほとんどの仕事が手作業なので、ものづくりが好きなヒトには向いていると思います」

 そう語る高橋文子さんは、「ハイプラ化成」に入社して5年。それ以前もずっと製造の仕事に携わってきましたが、機械を操作する仕事が中心だったそう。

「私は『成形』という工程を担当していますが、細かくて丁寧な作業が要求される仕事です。

 他の工程は重い機械を使ったりもしますが、この成形の仕事はそんなにチカラも必要ないので、女性でも、年齢も関係なく、できると思います。

 やっぱり一番の魅力は、自分がやった作業がキレイにカタチになっていくこと。形状が複雑なもの、例えばバンパーとかになるとさらに燃えるというか(笑)、作業がさらに面白くなってきますね」(文子さん)

 この仕事の魅力を、「カタチのないものをカタチにしていくこと」だと語った三浦さんといい、「自分がやった作業がキレイにカタチになっていくこと」だと語った文子さんといい、「ハイプラ化成」には「手づくり」によるものづくりを愛するヒトたちが集まっていました。

 また、FRPのものづくりには、こんな面白さも。

「繊維と樹脂を積層させたあとに硬化させるんですが、気温が低いと硬化に時間がかかったり、逆に気温が高いとすぐ硬化してしまったりするんです。

 それに硬化の時間も、材料ひとつひとつによって違うし、メーカーによっても違いがあります。

 そうした材料の特性を見極めて、気温や湿度に合わせて調整しながら作業するのは慣れるまで大変でしたが、そこがこの仕事の面白さでもあります」(文子さん)

 そう語る文子さんは「ハイプラ化成」に入社して、改めて手づくりによるものづくりの楽しさと出会いました。

「成形」の仕事の流れ

こちらが、ガラス繊維のマット。

①繊維をセット

ゲルコート処理を施した成形型にガラス繊維をセットします。

②積層

ハケやローラーでガラス繊維に樹脂をしみこませ(「含浸=がんしん」という)、空気を抜く(「脱泡=だっぽう」という)作業を繰り返し、ガラス繊維と樹脂を所定の厚さまで積層させます。他にスプレーでガラス繊維と樹脂を吹き付ける方法や、ガラス繊維をセットしたあとに注入機で樹脂を注入する方法も。

③硬化

樹脂は通常30分から1時間程度で硬化がはじまりますが、気温や湿度によって硬化スピードが変わるため、その日の気温や湿度に合わせて調整するとのこと。

より良いものづくりは、より良い“ひと”づくりから。

 臺 雄也(だい ゆうや)さんも、手づくりによるものづくりに魅せられ、「ハイプラ化成」に入社したひとり。

「入社したのは8年前です。当時は『FRP』なんて全然知りませんでした。

 ただ、面接のときに工場を案内していただいて、大きなすべり台やクルマのボディが並んでいるのを見て、『こんなにいろんなものが手づくりでできるのか』とビックリしたのを覚えています」(雄也さん)

 それで「面白そう」だと思った雄也さんは迷わず入社を決意。以後8年間、「仕上げ・検査・出荷」の工程を担当し、現在は6人のスタッフをまとめる主任の役割を担っています。

 雄也さんが任せられている「仕上げ・検査・出荷」の工程は、「ハイプラ化成」のものづくりの最後の門番であり、お客さまに届ける一番手前の仕事。

 それだけに雄也さんのミスはお客さまからのクレームにも直結し、会社のイメージダウンにもつながる責任ある仕事。プレッシャーも大きいそうですが、それ以上に大きなやりがいも……。

「僕が主に手がけているのがトラックの風防(エアデフレクター)なんですが、ふだん生活していても自分たちが手がけた製品を付けたトラックをよく見かけるんですよ。

 しかも、目立つところに付いているものなので、それを見るとさらに気合いが入るというか(笑) 『キレイなものをつくりたい』『いいものをお客さまに届けたい』という気持ちが、さらに強くなりますよね」

 そう語る雄也さんには夢があります。

「やっぱり、ゆくゆくはFRP成形技能士1級の資格を取りたいですね。ただ、この資格はFRPの全部の製造工程を総合しての試験になるので、まずは今の仕事をがんばって、それから他の工程にもチャレンジしていきたいですね」(雄也さん)

 「ハイプラ化成」では、5~6年ほど前から技能検定取得支援も積極的に行っており、会社として講習会や勉強会を実施。その成果が実り、現在まで「FRP成形技能士1級」取得者が1名増えて2名となり、「防水施工技能士1級」も1名が取得するまでに。

 FRP成形技能検定(1級)の検定委員も務める三浦さんは、会社として技能検定取得を支援する狙いをこう語ります。

「代表ともよく話すんですが、例えば、ひとつの工程だけしか知らないのと、自分が今やっている工程に加えて前後の工程もわかっているのでは全然違う。

 次の工程のヒトが何を求めているのかを考え、それに応えようと工夫する姿勢が、いい製品づくりにもつながっていくと思うんです。

 特にFRP成形技能士1級は全部の工程ができないと取れない資格です。会社としてそうした資格支援を行うことで、社員ひとりひとりが成長できて、それが会社としての成長にもつながるのではないかと思っています」(三浦さん)

仕上げの「磨き」の工程。職人が製品をひとつひとつ丁寧に磨き上げ、FRP特有の美しい光沢感を生み出していきます。
「検査」の工程。トラックの運転席の屋根に設置するエアデフレクター(風防)の検査の様子。
実際に取り付けるトラックの屋根を用意し、取り付け具合を検証。
製品と屋根の隙間、部品の取り付け具合など厳しいチェックを経て、出荷へ。
スタッフと打ち合わせをする雄也さん(右)。
フォークリフトでトラックに製品を積み込む雄也さん。

“ひと”が品質をつくる。個人の成長を、会社の強みに。

 手づくりによるものづくりに磨きをかけ、FRP業界でトップレベルの企業へと成長してきた「ハイプラ化成」。その強みを、同社の代表を務める小山昭彦さんは「品質・コスト・納期に対する市場のニーズにハイレベルで応えられる」ところだと語ります。

「三浦を講師に勉強会を開いたり、資格取得支援については継続して行うなど、5~6年前から人材育成にはチカラを入れてきました。

 私たちの仕事は、本当に手づくりの部分が多いので、その“ひと”の能力で製品の品質は変わってきますし、不良品や不具合が多くなれば、コストや納期にも影響してきます。

 ですから、やっぱり各個人の技術力が高くないと、コストや納期も含めて品質の高い製品はできません。

 私たちが人材育成にチカラを入れるのも、ひとりひとりの技術の向上が、個人の成長はもちろんですが、不良品の減少や不具合の低下などにもつながっていくから。

 それが品質・コスト・納期に対する市場のハイレベルな要求に応えられる『ハイプラ化成』の強みとなり、会社の信頼にもつながっていると思います」(小山さん)

 そう言って胸を張る小山さんは、お客さまからのオーダーにはなんでも応えようとするチャレンジ精神が「ハイプラ化成」のもうひとつの強みだとも。

 FRP業界では、船のボディなら船のボディ、住宅設備なら住宅設備など、自分の得意な領域以外の仕事は受けないところが多いそう。

 しかし、「ハイプラ化成」では、雄也さんが面接で工場を見学した際に驚いたように、自動車の内外装パーツから、農機具の機械カバー、大きなすべり台、さらに仮設トイレなどまで幅広く対応。

 さらに近年では、小山さん自身も新素材の研究開発に積極的にチャレンジ。昨年、森林総合研究所が開発した、スギの木から抽出した新素材「改質リグニン」を用いたGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を、産業技術総合研究所とともに自動車用内外装パーツに活用する取り組みにも参加しています。その取り組みとは……。

トップの写真に登場する光岡自動車の「ビュート」にも、新素材「改質リグニン」を採用したパーツが一部利用されているそう。

クルマづくりが変わる? 環境にやさしい未来に向かって、チャレンジ!

 そもそも「改質リグニン」とはなんぞや? という話ですが、「リグニン」は木材を構成する主要成分のひとつ。すべての木材におよそ30%含まれており、環境にやさしい天然成分であると同時に、強固で耐熱性にもすぐれていることから、石油由来の樹脂にかわる工業製品の材料として長年注目されていました。

 しかし、リグニンは樹木の種類や生育環境などによっても性質が異なってしまうため、量産化できず、工業製品への利用は進んでいませんでした。

 そこで目をつけたのが、「スギ」。日本固有の樹種であるスギは日本で最も多く植えられている樹木でもあるため、性質の均一なリグニンを日本全国で安定供給することができます。

 さらに、スギから抽出したリグニンをPEG(ポリエチレングリコール)で改質(性質を改良)することで耐熱性と加工性がさらに向上。

 この研究開発に、「産業技術総合研究所」、「森林総合研究所」、「光岡自動車」とともに取り組んでいるのが、小山さん。

「FRPには、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などいろんな種類の強化材がある。樹脂もエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などさまざまあって、組み合わせをいろいろ変えることで強度や耐熱性なども変わってきます。

 そこが複合材料とも呼ばれるFRPの面白いところなんですが、新しい素材が加わることでその可能性がさらにひろがる。まあ、なかなか新しい素材はできませんが(笑)、これからFRPの世界はさらに面白くなると思いますよ」

 そう言って微笑む小山さんは、誰よりもFRPの未来にワクワクしているヒトでした。

 手づくりによるものづくりに磨きをかけ、従業員の成長とともに進化し続ける「ハイプラ化成」。FRPの輝ける未来に向かって、チャレンジの日々に終わりはありません。

◆ 新素材「改質リグニン」を使ったパーツ◆

トップ写真の 「ビュート」に搭載。 一般の内装パーツと差異はほとんど感じられません。

「ハイプラ化成」の工場でつくられていた「ビュート」のボンネットにも「改質リグニン」が。
環境にやさしい新素材の登場で、クルマづくりの未来も……。

◇「ハイプラ化成株式会社」の求人

「ハイプラ化成株式会社」では、一緒に働く仲間を募集中! 興味のある方はこちら!  

(了)

ハイプラ化成株式会社    

岩手県北上市村崎野8-92-5

Tel/0197-68-2035

2019-06-21|
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