なぜ、この猛暑の時期に、わざわざ自転車ツアーなの?
(真夏に自転車ツアー? マジかよ! 熱中症になるぞ! 俺を殺す気か!?)
北上市のスポーツ資源や地域資源を活用して、観光客が「北上市に訪れるきっかけ」をつくろうと、さまざまな体験ツアーを企画している地域おこし協力隊・深津咲奈さん。
そんな彼女の「今度、自転車ツアーやるんで、来てくださいよ」という誘いを受けて、いちばん最初に思ったのが、それでした。
深津さんは、学生時代にラクロス選手として活躍。22歳以下の日本代表にも選ばれたバリバリの体育会系で、人生は体力で乗り越えられると、たぶん、きっと信じている方。
そんなヒトが企画する総距離30kmの自転車ツアーは、どうせ、きっと、たぶん「ツール・ド・フランス」のような競争を主体とした激しいもので、クルマ生活にすっかり慣れきってしまった私が参加するのは、身の破滅を意味します。
そこで、私は当たり障りのない感じで断ろうと思っていたのですが、企画内容を見ると「ポタリング」なる聞きなれぬワードが……。
なんでも、「呼吸が乱れない程度の速度で自転車を走らせる有酸素運動を主体としたスタイルのサイクリングで、自転車でゆったり散歩するイメージ」のツアーだとか。
さらに、北上市では6月から、観光やビジネスで訪れた方の交通手段のひとつとして活用してもらおうと、電動アシスト付きの自転車を使ったシェアサイクルサービス「チャリオ」の実証実験も開始しています。
今回の自転車ツアーでは、その「電動アシスト付き自転車のレンタルもあり!」とのこと。私も記事でシェアサイクルサービス「チャリオ」の話は触れることもある手前、この機会にじっくり体験してみようかと思った矢先、今度は北上市に「およそ2ヘクタールの広大な敷地に約10万本の黄色い花が絨毯のように咲き誇る場所がある」というニュースが……。
しかも、その場所は深津さんが企画する「ポタリングツアー」に含まれていると知り、「じゃあ、参加してみっか!」ということで、参加したのが昨日、8月18日(日)。
集合は、朝8時。JR北上駅西口にあるシェアサイクルのポートの前には、5名の参加者の姿が。長野県や新潟県から参加されたお二人の男性は、お仕事を引退され、今は好きなアウトドアを楽しみながらアチコチ旅をしている方。従って、乗る自転車も電動アシスト付き自転車ではなく、スポーツサイクルを利用。いわゆる「深津系」です。(そんな言葉はないか……)
一方、西和賀から参加されたラガーマンの方、北上市から参加された女性の方、さらに私の3人はもちろん電動アシスト付き自転車をレンタル。さっそく乗車してみると……。
結論から言えば、快適!
自転車のサドルにまたがり、いざ、べダルを踏み込むと、びっくりするぐらい軽々と進んでくれます。今回の総距離30kmのコースは、ほとんどが平たんなコースで、きつい坂は2カ所だけでしたが、その坂もラクラク!
深津さんを含め、スポーツサイクルに乗車したスポーツやアウトドアを愛するお三方が、歯を食いしばって坂道をのぼるなか、電動アシスト付き自転車に乗った私は、息を乱すことも、歯を食いしばることもなく、なんならこの猛暑のなか、歯を食いしばってペダルを漕ぐ方々を、爽やかな笑顔で眺める余裕すらも(もっとも、スポーツサイクルに乗っているお三方は、その坂道を自分の足でのぼることを楽しむ心の余裕がある点で、そもそも私とは志が違うのですが……)
というわけで、今回は「ポタリングツアー」を散歩気分でたっぷり堪能できました! というお話です!
夏も快適! 電動アシスト付き自転車で、いざ出発!
さて、深津さんは私たちをどこに連れてってくれるのでしょう? 「夏のディープな田舎の暮らしとヒトに出会う旅」がテーマとのことですが……。
JR北上駅から10分ほどでしょうか。マチナカを通り、田園風景のなかに入ってきたと思ったら、そこで出迎えてくれたのは、10頭ほどのヤギたち。
立派な角にびっくり!
濃厚なヤギのミルクや、プリンまでいただいちゃいました! ミルクはお替わりも! おいしかったです。ごちそうさまでした!
次は、築125年を超える古民家へ。
田園風景のなかを走っていると、あちこちでサギの姿が……。あぜ道にちょこんと佇む姿、田んぼの上を優雅に舞い飛ぶ姿は、のどかですね~。
やがて現れたのは……、
こちらの古民家は明治25年頃に建てられたものだそう。
古民家の隣にある冷たい湧き水をいただきました。最高のおもてなしですね。
古民家内の見学も。中は風もよく通り、快適でした!
こちらは、井戸の跡とのこと。「家の中に井戸があるなんて……」と驚く私たち。
昔の職人さんたちの丁寧な仕事ぶりがうかがえます。
休憩も兼ねた古民家見学が終わると、次は……。
とうもろこしの収穫体験へ、出発!
こちらは和賀川。北上川でいちばん大きな支流です。
釣り人の姿も。
田園風景のなかをのんびり進み、
1つめの坂道を越えると……、
お目当てのとうもろこし畑に到着。2日前の台風の影響で倒れているものもありますが、とうもろこし自体には影響はないとのこと。
こちらは、「きたかみ仕事人図鑑」でもお馴染み、佐藤孝志さんの畑です。
とうもろこしの「ひげ」と呼ばれる、ふさふさの部分が黒くなっていると収穫の時期とのこと。
とうもろこし畑の周りは、電気柵が。「これがないと、熊に全部やられます」と佐藤さん。
熊も大好物のとうもろこし、そのお味は……。
次は、いよいよ約10万本の黄色い花が咲き誇る場所へ!
周りの田んぼは、すべて「ひとめぼれ」という品種のお米をつくっているそう。果たして、約10万本の黄色い花が咲き誇る場所は「ひとめぼれ」するほど美しいのか!?
自転車を走らせていると、突然、たくさんのヒトの姿が……。
あちこちで、記念撮影も!
こちらが、およそ2ヘクタールの畑に約10万本のひまわりが咲き誇る場所。メディアにも多く取り上げられ、すっかり北上市の新しい観光名所となったひまわり畑です。
実はこちらも先ほどのとうもろこし収穫体験でお世話になった佐藤孝志さんの畑。
佐藤さんは本年度の北上市の兼業農家チャレンジ支援事業のひとつとして、東京農大の学生のアイデア(遊休農地などにひまわりを作付けし、その種を搾り、ひまわり油などに加工し、商品として販売する)をカタチにしようと奮闘中。
さらに、このひまわり畑を観光のひとつとしてサイクリングコースなどにも組み入れ、来月には市内の福祉施設と協力して種も収穫。
商品化したひまわり油を地域の協力店などで販売するなど、地域全体を巻き込み、盛りあげる横断的な取り組みにしたいと、今年の5月から活動してきました。
種を収穫し、商品化する取り組みはこれからいよいよ本番ですが、この夏の時期に、地域にヒトを呼び込む観光の新しい名所としての役割は十二分に果たしている様子。
黄色い大きな花を咲かせたひまわりの横で、うれしそうに写真を撮る親子連れやカップルの姿を見ると、来年はさらに観光名所として盛りあがりそうな予感。来年も、楽しみですね!
そろそろお腹が……。今日のランチは?
さて、最後に向かったのは……
ひまわり畑から自転車で5分ほどのところにある「夏油高原古民家カフェ 小昼~kobiru〜」。
こちらでいただいたのは、先ほど収穫したとうもろこしと地元の野菜をたっぷり使用したランチ。
野菜そのもののおいしさを大切にした料理もおいしかったですが、とうもろこしの甘味とご飯の旨味に、コクのあるバターの味わいがプラスされたとうもろこしご飯は絶品でした! これも、がんばって自転車を漕いできたお陰かな?(電動アシスト付きですけどね~)
おいしいランチを食べ、ゆっくり休憩したら、あとは帰るだけ! 午後は暑さがさらに厳しくなるため、のんびりサイクリングでJR北上駅へ。
1カ所だけ急な坂道がありましたが、電動アシスト付き自転車ならラクラク! それ以外もゆっくり下り坂の道が続くので、意外とスイスイ帰ってこられました。
帰り道は、白鳥の飛来地として有名な大堤公園の横を通りました。そこには……
(まさか、見送ってもらえるとは……。あざ~す!)
総距離30km、朝8時にスタートした「ポタリングツアー」は、午後2時少し前にJR北上駅に着いて予定通り終了。
さて、この日の一番の収穫は……。「電動アシスト付き自転車は快適!」ということはもちろんですが(笑)、いろんなところで北上市では“楽しい”がツナガッテいると実感できたこと。
さて、来週は……。
(了)
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