4月21日、展勝地から西へ。信仰の山・和賀三山のふもとに、それは……。
今年、開園100周年を迎える展勝地で満開の桜と美しい夜桜を堪能したのもつかの間、とある山里に白装束の集団が現れたという情報を入手。
人気マンガ『炎炎ノ消防隊』に登場する「伝道者一派か? 焔ビト出現か?」と慌てた筆者は、さっそく現地へ。
その場所は、北上市街地から西へ40分ほどクルマを走らせた山間にひっそりとありました。一見すると、あたたかな木漏れ日に包まれた、のどかな山里の平和な風景がひろがっています。
しかし……。
北上市には、山伏(修験者)が厳しい修行をしていた信仰の山として知られる和賀三山(月山・羽山・羽黒山)があり、そのひとつ「羽山」の登山道の入り口が近くに。また、修験道の聖地・出羽三山(山形県)の流れをくみ、江戸時代には山伏が暮らしていたという修験道場のある古民家「多聞院伊澤家(たもんいんいさわけ)」(1990年に国の重要文化財に指定)もクルマで数分の距離に。
さらに山の奥深くに分け入っていくと、藩政時代から300年近く栄え昭和に閉山し、現在は廃墟となった「水沢鉱山跡」があり、歩いて数分の距離には北上市と横手市(秋田県)を結ぶJR北上線の「岩沢駅」があるものの、そこは無人駅……。
情報を集めれば集めるほど、人気マンガ『炎炎ノ消防隊』に登場する伝道者一派が暗躍する舞台が整っているではないか!
そう確信した筆者は、アドラバーストなど持ち合わせていないものの勇気をふりしぼり、伝道者一派のたくらみを探るべく、現場に踏み入っていったのでした。
すると目の前に現れたのは……。
清らかな水がサラサラと流れる湿原の澄んだ水のなかに点々と浮かぶように佇んでいたのは、白いベールを身にまとった美しいミズバショウたち……。
雪解けの季節を迎えた山里に、白い妖精のような美しい姿で毎年現れるその花の花言葉は、「変わらぬ美しさ」。また、「美しい思い出」とも。
長い冬を乗り越えると純白の衣をまとって毎年現れ、春の訪れを告げてくれるミズバショウは、それを心待ちにしていた山里の人々にとって「変わらぬ美しさ」であり、可憐なその姿は春を待ちわびる人々が心に思い描く「美しい思い出」ともなるのでしょう。
ちなみに、以前「ざぜん草」を紹介しましたが、ミズバショウもそれと同じ仲間。
花のように見える白い部分は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる葉の一種で、中央の黄色や緑色した棒状の表面にあるツブツブが花だそう。匂いで昆虫を引き寄せ、受粉の手伝いをしてもらうのも「ざぜん草」と同じ。この日も昆虫の姿が……。
のどかに見える山里ですが、自然のなかでは小さな生き物たちが春の営みに大忙しです。
そう思って眺めてみれば、ミズバショウの周りにはかわいらしい野草たちの姿があり、あちこちで「春だよ」と元気に花を咲かせています。
この可憐な花たちと出会えるのは、県内有数のミズバショウの群生地として知られる「岩沢ミズバショウ群生地」。
筆者がお邪魔したのが、4月21日(水)。例年、展勝地の桜が見頃を迎える頃に、こちらのミズバショウも見頃となるそう。
今年はあたたかい日が続いたため、展勝地の桜同様、ミズバショウの開花も例年より早かったようですが、白い可憐な姿はもう少し楽しめそうです(*´艸`*)
というわけで、雪解けの澄んだ水のなかに現われた白い妖精たちと出会って、すっかり筆者も心が洗われたよう。
え? 伝道者一派はどうなったかって?
ミズバショウの「変わらぬ美しさ」を前に、伝道者一派のことなどキレイさっぱり清らかな水に流しました、とさ<(_ _)>
(了)
岩沢ミズバショウ群生地
岩手県北上市和賀町岩沢10
JR北上線「岩沢駅」から徒歩約4分
見頃:例年4月中旬から下旬
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