10月7日(月)、北上川を眼下に望む「ホテルシティプラザ北上」で、北上市産業支援センターと北上信用金庫が主催する「創業セミナー」が開催されました。
北上市産業支援センターでは、北上市でがんばる企業とともに、これから起業しようとがんばるヒトたちも応援。11月9日(土)からは受講料無料で、北上市や西和賀町で創業したい方・創業して間もない方を対象に、本年度2回目となる「創業支援塾」(毎週土曜日開催・全5回)もスタート。
今回のセミナーは「創業支援塾」の開催を前に、岩手県内外から多様な先輩起業家を迎え、失敗談なども交えながら、それぞれの熱い想いや夢を語ってもらい、これから起業する方はもちろん、起業について悩んでいる方の不安を解決してもらおうと企画されました。
自分は何のために起業したのか? ぶれないミッションが成長の鍵。
同セミナーの最初にステージに立ったのは、「ノースビレッジ合同会社」の代表社員を務める栗谷川柳子さん。栗谷川さんは農産物の流通事業を通して地域農業を活性化させたいと2010年に地元・青森県三戸町で起業されました。
そんな栗谷川さんの最大のピンチは、創業から1年も経たずに発生した東日本大震災。その影響で物流が麻痺し、せっかく立ち上げた会社を畳むかどうかの瀬戸際まで追い込まれることに。
しかし、そんなときに支えとなったのが、「ミッション=自分は何のために起業したのか?」。 その原点に立ち返って奮起し、倒産の危機を乗り越えた経験を例に、ぶれることのない「ミッション」を持つことの大切さを強く語っていました。
ちなみに、「ノースビレッジ合同会社」のミッションは、「地域に埋もれている資源(ヒト・モノ・文化)を掘り起こし、地域課題の解決に貢献する」こと。
地域農業の活性化をめざして創業した同社の事業は、農産物の流通事業にはじまり、農家の規格外の野菜と飲食店をつなぐ仕組みづくりの構築、さらにそれらを加工して販売することはもちろん、古民家を活用して作り手と消費者をつなぐショップもオープン。
その一方で、新たな一歩を踏み出せない起業家が多いという現状を踏まえ、そんなヒトたちを支援する空間も創出するなど、活躍のフィールドをひろげています。
その取り組みは、一見変化してきているようですが、「地域に埋もれている資源(ヒト・モノ・文化)を掘り起こし、地域課題の解決に貢献する」という当初のミッションからは、少しもぶれてはいません。
地域の課題と時代のニーズを読み取りながら柔軟に事業内容を変化させつつ、当初の「ミッション」の実現に向かってぶれずに突き進む栗谷川さんの講演は、これから起業をめざす方にとってもとても参考になるお話でした。
極地に立ったとき、それが支えになる……。北上市の小さなお店の挑戦。
続いて、地元・北上市から登場したのは、北上市常盤台の住宅街にひっそりと佇む「steak & bistro 小春日和」のオーナー・十良澤健二さん。十良澤さんは、地元で人気のステーキ・鉄板料理店の料理長を務めたのちに独立し、2018年3月に同店をオープンしました。
起業の動機は、「“お店”の料理ではなく、“自分”の料理を」「お客さまとのコミュニケーションを大切にしたお店を」「家族との時間を」つくりたかったから。
そうした想いを抱いての独立であり、現在は同店を北上市の人気店へと成長させている十良澤さんですが、起業の際には自己資金ゼロで、信用金庫から資金を借りてのスタートだったそう。
ご本人曰く「勢いで独立した感じで、準備不足でした」と語るなど最初の一年は苦労したとのこと。しかし、その詳細は詳しくはご紹介できませんが、1年目の反省点を抽出し、それを踏まえて今後の課題と戦略を具体的に、しかもざっくばらんに語った内容は、これから起業する方にとって、とても勉強になる講演でした。
なかでも印象的だったのは、最後に語った「極地に立ったとき、それが支えになる」という言葉。
自分は何のために起業したのか……。
自分の“原点”が支えになるというお話は、お一人目の栗谷川さんとも共通するものでした。
あせらないこと……。“私”を見極め、地道に継続したその先に。
続いて3人目に登場したのは、秋田県湯沢市で「うかる・きまる・わかる」をモットーにあらゆる教育支援を行う「リード学舎」を2010年に創業した阿部浩美さん。
阿部さんは地元・秋田県で高校教諭として充実した日々を過ごしていましたが、体調不良となり退職。しかし、教育への情熱は冷めることなく、ならば学校とは違うカタチで「教育で地域をつなげたい」と学習塾での起業を決意。
しかも、学習塾の経営は競争率が高いことから、他との差別化も考慮。元高校教諭という経験を活かし、障がいのある子ども、ひとり親家庭の子ども、学校になじめない子どもなどなど、さまざまな理由により学校との関係ひいては地域との関係・コミュニケーションが薄れる子どもたちに、教育の場をつくり、「教育で地域をつなぐ」事業を展開することに。
さらに今年の9月には、障がい者の方の生涯教育を充実させようと文部科学省が昨年度から全国の団体に委託して行っているモデル事業のひとつとして、障がいの有無にかかわらず、誰でも無料で利用できる生涯学習教室をオープンさせるなど、活躍のフィールドはひろがっています。
創業から9年目を迎え、順調に事業の可能性をのばしている阿部さんですが、これから起業する方に向けてのアドバイスとして語ったのが、「あせらないこと」。
阿部さんの学習塾は、「学校に通いづらい子どもたちが通う」というカタチで目立つと、子どもたちは塾にも通いづらくなります。そうならないよう、目立たないように活動してきたと語る阿部さんですが、最近では文部科学省の委託事業を受けるなど、その取り組みは高い信頼を得るほどに。
そうした今があるのも、“私”とは何か? “私”がやりたいことは何か? それを見極め、“私”を見失うことなく地道に活動してきたからという阿部さんの言葉には説得力がありました。また、前述のお2人同様、阿部さんも私=原点の大切さを強く語っている点が印象的でした。
北上市で動き出した起業家たちの新しい挑戦にもフォーカス!
岩手県内外で活躍する先輩起業家の講演に続いて行われたのが、北上市産業支援センターが開催する「創業支援塾」の修了生や、同センターの支援を受けて起業した方や、起業に向けて取り組んでいる方の事例紹介です。
話題のアイシングクッキーで、教室&販売もスタート!
2018年度の「創業支援塾」の第2期を修了し、北上市起業家チャレンジ支援事業「ビジネスプランコンテスト」優秀賞を受賞した「Myoppy」(ミョッピー)の髙橋かおるさんは、JR北上駅前にある「 CAFE TAIMEIKAN」の2階で、今年の5月から「アイシングクッキー教室」を開催。今後はアイシングクッキーの販売にもチカラを入れ、事業の可能性をひろげようと奮闘しています。
愛犬の体調管理にも気を配るトリミングサロンが好評!
同じく、2018年度の「創業支援塾」の第2期を修了した菊池繁子さんは、当初の目標通り北上市大通りにトリミングサロン「DOGHUG」(ドッグハグ)をオープン。動物病院での勤務経験も活かした丁寧な対応と、愛犬の体調管理にも気を配り、通信手帳に記録・配布するサービスが好評で、この10月でオープンから1周年を迎えますがお客さまも順調に増え、新たなスタッフの雇用も検討中とのこと。
ペットと泊まれるゲストハウスを。クラウドファンディングにも挑戦中!
最後は、今年の11月に北上市の稲瀬地区にペットと一緒に宿泊できるゲストハウス「蘖」(ひこばえ)をオープン予定の皆川貴美子さん。
北上市に移住して2年の皆川さんは、北上市の「食・土地・ヒト」に心酔。その魅力を多くのヒトに知ってもらいたいという想いと、元旅館女将だったころに「ペットと一緒に泊まりたい」という問い合わせが多かった経験をもとに、ペットも一緒に宿泊できるゲストハウスの起業を決意。
ゲストハウスとなる古民家の改修費用については、クラウドファンディングを活用。その夢の実現に向かって、チャレンジ中とのこと。皆川さんの取り組みの詳細・ぜひ応援したい方は、こちらをチェック!
ミッション、原点、私……。言葉は違えど、「なぜ起業したのか?」 その想いを忘れず、現在もその可能性をひろげ、夢の実現に向かって挑む先輩起業家たち。そして、夢に向かって最初の一歩を踏み出した起業家たち……。さまざまな想いや夢を抱いて、自分の道を切り拓くたくさんの起業家たちと出会えた今回の「創業セミナー」も、無事終了。
さて、次にこのステージに立つのは、どんな方でしょう。
北上市・西和賀町で起業したい方・起業して間もない方を対象に行う「創業支援塾」も11月9日(土)からスタート。起業に迷っている方、ご興味のある方は、ぜひこの機会に参加してみは? 受講料も無料です。夢をカタチに。はじめの一歩を踏み出そう!
◇「創業支援塾」のお問い合わせは、下記まで。
期間/第2期:11月9日(土)~12月14日(土)の毎週土曜日(全5回) ※11/23を除く。
時間/各回9:30~12:00
会場/北上市産業支援センター 研究会議室AB(北上市相去町山田2-18)
対象/北上市または西和賀町にて創業したい方、創業間もない方
申込締切/11月1日(金)まで
お問い合わせ/担当:古川・中嶋
mail:mono@ginga-net.ne.jp Tel:0197-71-2181
コメントを残す