1/10 北上市・小学生対象「工場見学・体験ツアー」リポート

 冬休みと夏休みの恒例イベント・北上市内の小学生を対象にした「工場見学・体験ツアー」が1月10日に開催されました。東北有数の産業集積都市として知られる北上市の魅力を子どもたちに体感してもらうために北上市が主催する同ツアーは、見学を受け入れる企業も子どもたちに楽しんでもらえるアレコレを準備している点が魅力。参加者も募集開始とともにすぐ定員に達するほどの人気で、今回も小学4年生から6年生の男女21名が参加し、2つのグループに分かれて工場を見学しました。

 というわけで、今回はそのツアーに同行! 北上市にはクルマ、スマホ、家電製品、医療・福祉、食品など毎日の暮らしに欠かせない製品や、暮らしを豊かにするモノをつくる工場がたくさんあります。さて、今回はどんな工場へ? いざ、出発!

暮らしに欠かせない
電気を届けるため。
東北エリアでトップシェアの

「コンクリートポール」を製造。

 「東北ポール株式会社」はコンクリートポール(電柱)の製造で国内2位、東北エリアではトップシェアを誇るなど、70年以上にわたって私たちの電気のある暮らしを支えるコンクリート製品の総合メーカーです。北上工場は東北に2ヵ所ある製造拠点のひとつとして1971年に操業。以来、半世紀を超えてコンクリートポールを中心に建物の耐震となるパイル(コンクリート杭)などのコンクリート製品を製造しています。

 工場見学は、そんな北上工場の歴史と役割に加え、コンクリートポールの製造方法などを担当者さんがわかりやすく解説するところからスタート。コンクリートポールは街のあちこちでよく見かけるものですが、よくよく見てみると「?」がいっぱいです。

 全長8~16mもあるコンクリートポールが上に向かって細くなっているのはなぜ? 台風のような強風が吹いても大丈夫なの? はたまた、コンクリートポールはどれくらいのチカラで折れるの? 今回は、そんな「?」の解決にもつながる工場見学となりました。それでは、いざ、工場の内部へ!

強風にも強い。
コンクリートポールの秘密を探ろう!

 工場内に足を踏み入れると、PC鋼材と呼ばれる特殊な鉄筋でつくられたコンクリートポールの骨組み(鉄筋カゴ)がお出迎え。台風のような強風でもコンクリートポールが折れないのは、この特殊な鉄筋に秘密が……。

 東北ポールでは、伸ばされた鉄筋が元に戻ろう(縮もう)とする性質を利用し、非常に高い強度のコンクリートポールをつくっているそう。例えば、台風などの強風でポールがしなり、その影響で小さなひび割れができたとしても、鉄筋の戻る力を利用してひび割れが閉じてしまうとのこと。強風でも折れにくい強靭さとひび割れも元通りにする修復力の高さを同時に実現する知恵が内部に隠れていました。

 鉄筋でできた骨組み(鉄筋カゴ)はその後、鉄の型枠に入れられコンクリートを注入し、高速で回転させた遠心力で筒状に締め固めます。このとき内部は空洞になりますが、特殊な鉄筋を使っているため強度は非常に強く、さらに内部をすべてコンクリートで充填するよりも軽量・低コストのものづくりが実現できるそう。ポールの内部の空洞も覗くことができましたが、ここにもものづくりの知恵が隠されていました。

▲工場内に保管されているコンクリートポール。右(上)に行くほど細くなっているのは、風の影響を小さくするためだそう。

コンクリートポールが折れた!
そのとき子どもたちは……。

 最後に見学したのはコンクリートポールの「曲げ耐力試験」です。同社ではこの試験を定期的に実施しており、今回の工場見学ではその様子を間近で見られるとのこと!

 実は「曲げ耐力試験」の様子は工場見学の前の説明で、実際にコンクリートポールが折れるところまで、子どもたちは動画で見ていました。しかし、その反応は……。特に驚くこともなく淡々と映像を見ていた子どもたちだったので、どうなるかと思いきや、やはりテレビ画面で見るのと、全長16mのコンクリートポールがしなる様子を間近で見るのとでは、その迫力には雲泥の差があります。

▲左下の写真がポールの先端を水平方向に2.2m引っ張った様子で、およそ2.1tの力が加わっているそう。頑丈なコンクリートポールが根本から折れる様子に子どもたちもビックリ!

 実際の「曲げ耐力試験」では、コンクリートポールの先端を水平方向に60cmほど引っ張ることでできた小さなヒビの様子と、それを戻したときにヒビがなくなっている様子を間近で見学し、子どもたちもビックリ!

 さらに、ポールの先端を水平方向に2.2mまで引っ張ったときは、近くで見学していた子どもたちも怖さのあまり、蜘蛛の子を散らすようにその場から遠ざかり、ポールが根本からバキッと折れる様子を固唾を飲んで見守っていました。 子どもたちにとっては、忘れられない体験になったことでしょう。

東北ポール株式会社:https://www.tohokupole.co.jp/

約1,000点の
自動車部品を展示。
見て、触れて、

ものづくりを体感。

 続いて訪れたのは、北上市産業支援センターにある「自動車部品分解展示場」です。「ヤリスクロス」の実物や分解された「アクア」の車両をはじめ、約1,000点の自動車部品が展示されており、実物の自動車部品を、見て、触れることができる岩手県内唯一の展示場です。

 子どもたちにも身近な自動車の展示ということで、担当者さんのクイズも交えた丁寧な説明を聞きながら子どもたちも興味津々の様子で見学。クルマの分解作業を撮影した動画を熱心に見たり、運転席に座ってうれしそうにハンドルを握ったりする姿も印象的でした。

 ちなみに、「自動車部品分解展示場」は無料で見学(平日9:00~17:00)できます。春休みに親子で訪れてみては? 詳細はこちら ⇒ 自動車部品分解展示場
 

北上市産業支援センター:https://kitakamiisc.jp/

お米について勉強しよう!
「お米の学校」開校!

 最後に訪れたのが「サタケ東北株式会社」です。同社は日本で最初に動力精米機をつくった「株式会社サタケ」の主力生産工場として1968年に設立。以来、部品加工から組立までを一貫して行うものづくり工場として、米農家さんを支える籾乾燥機・籾摺機・光選別機・精米機などを製造しており、籾摺機のシェアは約50%、光選別機のシェアは約70%になるそう。

 そんな同社が、小中学生を対象にお米に対する理解を深めてもらおうと開催しているのが「お米の学校」です。今回の工場見学では「お米の学校」でお米について学びながら、同社のものづくりの現場も見学することに。

「お米」はどうやって
食べられるようになるの?
その秘密を探ろう!

 というわけで、さっそく教室に入ると子どもたちの席には籾殻付きのお米と回転ハンドルが付いた道具が……。興味を惹かれつつ授業がはじまると、田んぼでお米を育てる農家さんの一年にわたる仕事内容や、収穫したお米が食卓にのぼるまでにどんな作業があるのか、担当者さんがわかりやすく教えてくれました。

 そして、子どもたちの前に置かれたあの道具の出番がついに登場。実はこの道具は手動式の籾摺器で、上部から籾殻付きのお米を入れてハンドルを回すとお米から籾殻をはがすことができるのですが、一旦やりだすと子どもたちは夢中になってハンドルを回していました。

 また、みんなで籾殻をはがしたお米(玄米)を卓上精米機にかけて白米にする「精米」という作業も体験。といっても、こちらは精米機のボタンを押すだけですが、薄茶色の玄米の表面(ぬか)が削られ、白いお米になっていく様子を子どもたちも興味深そうに見つめていました。私たちがいつも食べている「お米」ですが、そこには多くの手間と時間がかかっています。そのことを、身をもって体験した子どもたちでした。

収穫されたお米が
食卓にのぼるまで。
サタケ東北の
ものづくりとは?

 子どもたちが体験した工程は、サタケ東北がつくる籾乾燥機・籾摺機・光選別機・精米機などの役割とも重なります。というわけで、次は乾燥機と籾摺機をつくる工場へ。

 サタケ東北では「一枚の鉄板から完成品まで仕上げる」工場のため、一枚の鉄板をプレスして部品をつくる加工工程から、溶接、塗装、組立と完成品が仕上がるまでの工程を、順を追って見学することができました。

 大人の背よりも大きいプレス機で一枚の大きな鉄板からさまざまな部品ができる様子。何百トンもの圧力がかかるため、両手でボタンを押すことで作業者の手がプレス機にはさまれないように工夫された作業工程など、機械化されたものづくりの様子を目の当たりにして、子どもたちも圧倒された様子。

 その一方で工場見学が進むと、一枚の鉄板からさまざまな人の手が加わって籾摺機や乾燥機など複雑な機械が出来上がっていく様子を、子どもたちも真剣な眼差しで見つめていました。

 工場見学の最後は、子どもたちひとりひとりに「お米の学校」の修了証書が手渡されて終了となりました。「お米」も「ものづくり」もたくさんの人の手が加わり、私たちの元に届けられていると体感したひとときでしたが、子どもたちはどう感じたことでしょう。

サタケ東北株式会社:https://tohoku-satake.co.jp/

 北上市内の小学生21名が参加した地元の企業をめぐる「工場見学・体験ツアー」はこうして無事終了となりました。次は夏休みに行う予定です。お楽しみに!

▼2024年8月の「工場見学・体験ツアー」の様子はこちら ⇒ 2024年8月

▼2024年1月の「工場見学・体験ツアー」の様子はこちら ⇒ 2024年1月

(了)

2025-02-13|
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