小学生が地元の工場を見学!
新しい発見や体験にワクワク!
岩手県内はもちろん、東北でも有数の産業集積都市として知られている北上市。そんな街の魅力を、工場の見学や体験を通して地域の子どもたちに知ってもらおうと、北上市が主催する「工場見学・体験ツアー」が8月6日に開催されました。
同ツアーは夏休みと冬休みの2回開催しており、参加者も募集開始とともにすぐ定員に達するほどの人気だそうで、今回は小学4年生から6年生の男女24名が参加しました。子どもたちが対象ということで、見学を受け入れる企業も子どもたちにわかりやすく楽しんでもらえるアレコレを準備しているそう。
というわけで、今回は子どもたちに人気を集めるそのツアーに同行してみました! 北上市にはクルマ、スマホ、家電製品、医療・福祉、食品など毎日の暮らしに欠かせない製品や、暮らしを豊かにするモノをつくる工場がたくさんあります。さて、今回はその中からどんな工場へ? いざ、出発!
私たちの暮らしに欠かせない
電気製品の心臓部を支える!
ケミコン東日本株式会社 岩手工場
今回は2つのグループに分かれて2つの工場を見学しました。最初に訪れたのは、1969年に北上市で操業した「ケミコン東日本株式会社 岩手工場」です。
同社はさまざまな電気製品に使用されている電子部品「アルミ電解コンデンサ」で“世界No.1”のシェアを誇る「日本ケミコン」のグループ企業として、半世紀以上にわたって同部品の材料から製品までを一貫生産しています。“世界No.1”の高品質な製品づくりを実現するその優れた技術力により、海外工場への技術指導も行っているそう。
そこで今回は、実際に同社が手掛ける「アルミ電解コンデンサ」について体験を通して学んでいきました。
「アルミ電解コンデンサ」は、さまざまな電気製品の心臓部ともいえる電子回路の構成部品のひとつとして電気を蓄え放電するなどの役割を担っており、耐用年数は10~15年ほど。この「アルミ電解コンデンサ」の寿命が尽きると、電気製品も使用できなくなるそう。
私たちの暮らしに欠かせない電気製品に使用され、とても重要な役割を担っている部品とはいえ、しかし、ほとんどの子どもたちはその部品を見たことがありません。
そんな子どもたちのために用意されたのが、電子回路とさまざまな「アルミ電解コンデンサ」のサンプルです。「アルミ電解コンデンサ」とひと口に言っても、直径5mmに満たない小さいものから水筒のような大きなものまで、カタチも大きさもさまざま。
これらが電気製品に応じて、薄型テレビで10~60個、ゲーム機で10~30個、自動車になると50~200個、さらに一般家庭1軒当たりになると1,000~1,500個も使われていると知り、子どもたちも興味津々の様子でさまざまな「アルミ電解コンデンサ」に触れていました。
作業現場を見学・体感。コンデンサをカタチに!
続いて行われた工場見学では、「アルミ電解コンデンサ」の作業工程のうち、「巻込」と「封入」と呼ばれる工程を見学しましたが、印象的だったのが工場内で活躍する「自動搬送機」たち。工場内は撮影NGのため写真はありませんが、加工した製品を次の工程に運ぶ作業を自動化し、効率化を図ることで人手不足の解消にも役立てるなどさまざまな工夫がされていました。
工場見学の後には、さっそく見学した工程を体感! 「アルミ電解コンデンサ」を分解し、その仕組みを理解したうえで、今度は自分で部品を組み立ててカタチに。最後にアルミケースにフィルムを巻き付け、温風を吹きつけると、あら不思議。フィルムがキレイにアルミケースに貼りつき、製品が完成! あっという間の出来事に、子どもたちもびっくりしていました。
そして、工場見学の最後に待っていたのが敷地内にあるビオトープ。同社では近隣の自然環境保護や生物多様性保全活動にも取り組んでおり、その一環としてビオトープをつくり、北上川水系の絶滅危惧種である「ミナミメダカ」の保護活動も行っています。
生物多様性の大切さについて理解を深めるきっかけになればと、地域の小中学校にも「ミナミメダカ」を寄贈しているそう。私たちの暮らしに欠かせない電気製品の重要な役割を担う「アルミ電解コンデンサ」について体験を通して理解を深めた子どもたちですが、自分たちの身の周りに当たり前のようにある自然の大切さについても考える貴重な時間となりました。
見学の最後はみんなで記念撮影! さて、次はどんな工場へ?
廃ガラス100%の軽量発泡資材を
つくる工場でSDGsを体感!
株式会社 スパット北上
2つ目に訪れたのは、1963年に北上市で創業した「株式会社 スパット北上」です。同社は土木・舗装・宅地造成工事はもちろん、「壊すけど創る」をモットーに一般住宅からビルまで年間およそ200件の解体工事を手掛けています。その数字は県内でもトップクラスを誇りますが、注目は解体するだけでなく、解体後の廃棄物処理まで、リサイクルで有効活用できるように分別解体まで含めてワンストップで提供している点です。
同社ではこうしたノウハウをいかし、地域から排出される廃ガラスをリサイクルして、農業や土木・建設をはじめ、公園や屋上の緑化、水質浄化など幅広く活用できる環境にやさしい軽量発泡資材「スーパーソル」の製造にも取り組んでいます。
今回は、その「スーパーソル」を製造する工場を見学しました。
当日は、子どもたちが自宅から空き瓶を持って参加。無色透明、茶色、緑などさまざまな色のガラス瓶が揃いましたが、「スーパーソル」は通常の廃ガラスの再利用と異なり、色分けしなくても1つの工場で製品ができるため、輸送コストや環境負荷も抑えられ、効率的にリサイクルできる点も特徴だそう。
また、廃ガラスを細かく砕いてから高温で焼成するため軽石のようになり、軽量・多孔質・透水性・保水性にすぐれた特性を持っているため、比重・吸水性を調節(L1~L4)することで、さまざまな用途に活用できるようになるそう。捨てればゴミとなる廃ガラスですが、知恵と工夫でいろんなところで活躍できるように生まれ変わると知って子どもたちも驚いていました。
続いて製造工程の見学に移ると、特許を取得したガラス粉砕機が登場。同機械は、約8,000個の固いセラミックボールがぶつかり合いながら、廃ガラスを8mm以下のガラス粒に粉砕しているそうで、そのボールも実際に触ることができ、子どもたちも興味津々の様子。
さらに砕いたガラス粒を高温で焼成し、ガラス瓶が「スーパーソル」の製品として生まれ変わる様子を目の当たりにして、子どもたちも驚いていました。今回の製品は「防犯じゃり」として東日本のホームセンターなどで販売されるそう。多孔質のため、踏むとザクッ! ザクッ! と大きな音が出るだけでなく、庭などに敷き詰めることで雑草が生えにくくなるというメリットもあるそう。こうした真っ白な「防犯じゃり」は珍しく、東日本で製造しているのは同社くらいとのことで、そのことにもびっくりでした。
フォークリフトやショベルカーの試乗体験も!
工場見学の後に行われたのが、作業現場で使用されているフォークリフトやショベルカーの試乗体験です。フォークリフトは焼成した「スーパーソル」を移動させ、冷ます工程。ショベルカーは大きな袋に詰めた「スーパーソル」を運ぶ工程を、同社スタッフの指導のもと、ひとりひとり体験しました。
みんな真剣な様子でしたが、作業が成功したときはにっこり微笑んだり、ホッと胸をなでおろしたりと、さまざまな表情を見せてくれました。
見学の最後はみんなで記念撮影! 新しい発見や初めての体験とたくさん出会えて、思い出に残る夏休みの1日となったのではないでしょうか。
北上市内の小学生24名が参加した地元の企業をめぐる「工場見学・体験ツアー」はこうして無事終了となりました。次は冬休みに行う予定です。今度はどんな企業へ?
★1月に行った小学生対象「工場・体験ツアー」の様子も、どうぞ、ご覧ください。
https://kitakami-shigotonin.com/news-event/f-tour2401/
(了)
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